アメリカのバイデン政権が、台湾との兵器共同生産計画の検討を開始するなど、「台湾有事」に向けた緊張感が高まっている。両国の狭間で日本はどう立ち振る舞うべきなのか? 元財務官僚で第一次安倍内閣ではブレーンとして活躍した嘉悦大学教授の高橋洋一氏と、元経産官僚で政治・経済アナリストの古賀茂明氏が激論を戦わせた。
日米同盟で戦争確率は本当に減るのか?
――安倍政権の政治的レガシーとして、アベノミクスとともによく言われるのが安全保障・外交での成果です。一定の条件のもとでの集団的自衛権行使を可能とする安保法制の制定など、安倍元首相が成しとげた仕事は多い。ただ、こちらもアベノミクス同様、評価は人によってまちまちです。
高橋 2015年にできた安保法制は大きい。日本が戦争を仕掛けられるリスクを確実に減らした。私の言い方で言えば、「戦争確率を減らした」と言えます。
――戦争確率ですか。
高橋 私がプリンストン大学で金融財政以外に学んだことがもうひとつあって、それが「国家が戦争する確率をどうすれば減らすことができるか?」というもの。
その条件は大別すると、①仮想敵国が民主主義国であるかどうか、②自国が同盟を結んでいるかどうか、③仮想敵国との軍事的均衡がとれているかどうか、の3つです。
民主主義国同士が戦争をする確率は低いし、同盟を結んでいると戦争を仕掛けられるリスクは減る。また軍事力が周辺国などとアンバランスになっていない状況では戦争になることは少ないという研究データがあるんです。
それで私は「この3つの条件を整備して行けば、日本の安全の確率は高まりますよ」と、安倍さんに伝えた。同盟の要素のひとつが集団的自衛権で、その行使を可能にした安保法制によって日米同盟はさらに強くなった。
強い国と組んでいれば、戦争を仕掛けられる確率は減ります。だから、安保法制はまちがいなく、安倍さんの功績でしょう。
古賀 ぼくの評価はまったく逆。たしかに、学問としてみれば、確率論的には高橋さんの言う通りでしょう。でも、それは一般論に過ぎない。ひとつひとつのケースには、それぞれ全く異なる事情があることを捨象している。
例えば、同盟の相手であるアメリカがどんな国かという視点が抜け落ちている。アメリカって世界で一番戦争を起こしてきた国ですよ。
それも湾岸戦争のように、時にはフェイクニュースまで流して戦争を仕立て上げてきた。ぼくは台湾有事を心配しています。米中が戦争になれば、安保法制によって自衛隊も参戦する可能性が高い。すでにそれを前提にした議論さえ始まっている。
米中戦争になれば、中国も自衛隊や国内にある米軍基地を攻撃せざるを得ない。好戦的なアメリカと同盟しているからこそ、逆に日本を危険にしている。安倍さんがやったことはそういうことなんです。
●「日本の中立化」はお花畑論か
高橋 だけど、ウクライナを見れば、やはり同盟は必要じゃないですか? だって、バイデンが「ウクライナには米軍を派遣しない」と明言した直後に、ロシアはウクライナに攻め込んだんですよ。
アメリカがしっかりとウクライナにコミットメントすると宣言していれば、プーチンは戦争を決断しなかったかもしれない。仮にアメリカが戦争好きのイカれた国だったとしても、そこと組んでいれば、少なくともそのイケれた国に攻め込まれるリスクはなくなる。
国際政治では善人なんて誰もいないと考えるべきなんです。どこの国も自国の利益が大切なの。それに世界で一番強いアメリカと同盟を組んでいれば、それだけで他国から攻められるリスクは減る。戦争に関する統計データでもそのことは実証されてますよ。
安倍さんはリアリストだから、安保法制でアメリカとの同盟強化が日本の安全に寄与すると合理的に判断したんだ。「安保法制が戦争確率を高めるならどうしますか」と安倍さんに聞いたことがあるが、「高めるなら提案しない」といっていた。
古賀 高橋さんは同盟の強化が日本の安全につながると考えているようだけど、僕は別の手立てがあると考えています。台湾有事に限って言えば、それは中立。(省略…)
https://news.yahoo.co.jp/articles/5b71a2bd203e7e1bf2b4f24fa4325d4ef39da26a
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引用元: ・【高橋洋一×古賀茂明】 迫りくる台湾有事。日本が「戦争確率」を減らすためにできること[10/22] [LingLing★]