本書の中で八木澤氏が訪れた19ヵ所の現場では、高知の山奥の村で密かに受け継がれてきた術を継承する「拝み屋」本人に出会えた例もある。だが、その当時の言い伝えをわずかながらにも聞くことができた場所はまだいいほうで、当時の痕跡が何も残っていない場所さえあった。それでも八木澤氏は「現場を歩くことが大事」だと言う。
「その風景を見れば、そこに何か手がかりはあると思うんです。例えば秩父の無戸籍者が暮らしていた村があった場所には、もう何も残っていないんです。しかし、そこは荒川の源流の最初の一滴があって、生活できる場所だった。間違いなくそこにいたって確証はないです。
だけど、その周辺にいたということは書いてあって、客観的事実として人が生きていくことができたんだなっていうことは感じました。それは現場を歩いたからわかったことで、それがなくて成立はしないと思うんです」
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◆独自の呪術信仰〝いざなぎ流〟─拝み屋が暮らす集落(高知県香美市)
《平家の落人伝説もある高知県の山中に拝み屋または太夫と呼ばれる人々がいることを知ったのは今から一五年前のことだった》(『忘れられた日本史の現場を歩く』より。以下同)
この地独特の仏教や神道、陰陽道が入り混じった信仰は〝いざなぎ流〟とも呼ばれ、それを司る太夫は病人の祈祷や村祭りなど、村人の日常生活全般に関わってきた。時には村人の依頼で呪いをかけることもあったという。八木澤氏は今も現役の太夫がいるという高知県物部村(現・高知県香美市物部町)へと向かった。1ヵ月前に林道が通ったばかりで、まさに『ポツンと一軒家』に出てきそうな場所を訪ね歩いた八木澤氏は「最後の1人」の太夫に会うことができたのだった。
「四国の高知と徳島の県境で、本当に一番山深いところでした。唯一あった道も最近できたもので、それまでは人の足でしか行けなかった。本当に陸の孤島みたいな場所なんですよ。そんな隔絶したところだから医者なんていないじゃないですか。だから、まじないというか、土着の信仰に頼るしかないわけです。
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今ではほとんどの人が病院にかかることができるから、必要がなくなってしまったけど、おそらくこういう民間信仰は日本各地にあったんでしょうね。もしかすると、民間信仰が進んでいくとオウム真理教のような新興宗教に繋がっていく部分もあるのかもしれないけど、そういったものを受け容れてしまう土壌も日本にはそもそもあるんだろうなと思いました」
◆国家に背を向けた人々の〝聖域〟─無戸籍者たちの谷(埼玉県秩父市ほか)
《日本の無戸籍者に関する新聞記事を目にしたのは、今から五年ほど前のことだった。神戸大学のデーターベースに保管されていたものだった。記事は戦前のもので、1920(大正九)年9月30日付けで、大阪毎日新聞に掲載されていた。ちょうどその年は、日本で初めての国勢調査が行われた年でもあった。その調査の過程で、無戸籍者の存在が公のものとなったのだった。》
記事によれば、埼玉県秩父郡三国峠山麓などに「無施政無警察」の部落があり、その一つは31戸で人口210余人だったという。住民の中には群馬県上野村に籍をおく者がわずかにいるのみで多くの住人には戸籍がなかった。住民たちは木箸や下駄材を1日かけて群馬県に売りに行くことで生計をたてており、学校もどこかから来た老僧が寺子屋式で行っていたという。現地は相当に山深い場所で秩父から行くのには山梨県側から回りこまなければならず、居所もよく分からない人間のために何日もかけられないということで県が調査を放棄したという内容だった。(以下ソース)
7/21(日) 14:00配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/fe664202b6547e5cd1dd77346cf381698a195deb
引用元: ・【因習村】呪術信仰、無戸籍者の部落…忘れられた日本史の現場を歩く [樽悶★]
その穢れを禊ぎ祓え