変形性膝関節症は膝の軟骨が加齢などで少しずつすり減り、関節が変形する病気。痛みで歩行や階段の利用が難しくなり、高齢者の外出や運動が減って健康寿命を縮める一因になる。
対症療法や運動療法はあるが、進行が速いと人工関節を入れる手術などが必要になる。
位高啓史 ・同大教授らのチームは、人工的につくったmRNAで膝の痛みを抑える新しい再生医療の治験を計画した。mRNAは新型コロナウイルスワクチンの主成分として注目され、他の疾患に応用する研究が世界的に進んでいる。
今回のmRNAは、膝軟骨の細胞の働きを高めるたんぱく質の遺伝情報でできている。患者の膝に注入すると、膝の細胞がこのたんぱく質を作り出し、軟骨を構成するコラーゲンを増やすなどして、軟骨が壊れるのを防ぐ。
動物実験では軟骨の摩耗や関節の変形を抑えることに成功した。
治験には、mRNA医薬品の開発を手がけるバイオ企業「NANO MRNA」(東京都港区)などが協力する。mRNAを直径1万分の1ミリ以下の膜に包んだ粒子状の医薬品とし、膝の細胞に届きやすくする。
治験は少人数から始める方針で、年度内にも治験計画を国の機関に提出する。安全性が確認できれば治験の人数を増やし、有効性を検証した上で、医薬品としての承認をめざす。
位高教授は「変形性膝関節症の痛みと進行を抑え、将来の関節手術を避けられれば、患者の身体的、経済的な負担を軽くすることができる。mRNAを使った日本発の新しい医療を届けたい」と話している。
mRNAを使った医薬品は、新型コロナワクチンで米企業などが世界で初めて実用化し、次世代医療を支えると期待されている。
感染症やがんのワクチンのほか、遺伝病や心臓疾患などの治療薬の研究開発も進む。
新型コロナワクチンは健康な人の体内で「異物」であるウイルスの一部を作り、免疫をつける仕組みだった。
今回の治験は患者の体内で軟骨の構造を再生させ、膝の痛みを抑えるたんぱく質を作らせる「薬」としてmRNAを用いる。
mRNA医薬品は短期間に大量生産できる。国立医薬品食品衛生研究所によると、mRNAを使った臨床試験は2019年4月時点で世界で17件確認できたが、今年4月時点では140件と急増した。
引用元: ・【膝の痛みにmRNA注入で軟骨摩耗防ぐ】東京医科歯科大などのチームが治験へ、整形外科で実用化なら世界初・・・対象の病気は「変形性膝関節症」で、国内の患者は推計2000万人以上に上る