柔道が大いに盛り上がった大会となった一方で連日ネット上では「誤審」を疑う声や記事が拡散された。現在も最前線を見ている“現場”はどう感じていたのか。48キロ級で金メダルの角田夏実の母校・東京学芸大柔道部監督であり同校の芸術スポーツ科学系・准教授の久保田浩史氏に話を聞いた。
日本勢の活躍の一方で男子60キロ級・永山竜樹の「待て」を巡る不可解な判定を皮切りに「誤審」というワードがネットやテレビであふれた。
Xでは競技初日から「柔道の審判」がトレンド入りする事態に。五輪だけでなく、常日頃最前線にいる久保田氏の第一声は「誤審はほぼなかったと思います」だった。
「柔道のルールは一定期間で改訂されています。柔道の国際大会も大会ごとに微妙に判定が異なることもあります。例えば反則の指導の取り方が厳しめであったり、緩めであったり、早かったり遅かったり。でもメディアが注目するのは4年に1度のオリンピックなので。3年前の東京五輪からすると『変だな』と感じたのでしょう。たまにしか試合を見ない人、国際大会を見ない人、国内の試合しか見ない人からすると『なんだこれは』と。過去に柔道していた人が今回を見た時に『こんなの柔道じゃない』となってしまったのだと思います」
試合をジャッジするのは機械ではなく人間だ。考え方に差が出ないようにするために、事前に審判会議を行い、試合審判規定の確認をするのが通常だ。
「さまざまな大会の審判会議で基本的事項や注意すべき事項を確認します。試合をダイナミックに動かすことを念頭に置いたときに、両方に指導を与えても試合自体は動かないので、消極的な方を審判が見極めて指導を出そうとかですね。そうやって試合を動かしていこうというのが審判の基本スタンスです」
その上で競技が行われた8日間は判定基準に大きなブレはなかったという。開催国であるフランスの選手に対しても、指導を出すかどうかの微妙なラインで観客の歓声やブーイングに流されなかったケースもあり、おおむね「公平」だったと指摘した。
男子60キロ級の永山がフランシスコ・ガリゴス戦で審判からの「待て」がかかった後に落ちてしまった試合については、こう見解を示した。
「『待て』がかかってガリゴス選手がすぐ離せば良かったですが、観客の声もあって聞こえなかったと聞きました。そうであれば聞こえるまで審判は近づいて『待て』を言わなければならなかったと思います。『待て』から離すまでの間に3~4秒あって、その間に落ちるというのはあり得ます。袖車絞でしたけど、それを審判自身が実際にやったことあるかどうかもポイントなのではないでしょうか。『この形なら絞めが入るから少し時間を見た方がいいよね』とその技の経験者なら思うかもしれません」
今大会では審判の質も議論になったが、現在は五輪レベルの審判に格差はないという。
「ドゥイエ―篠原(※)は完全な誤審だと思います。あのときは『この大陸から何人出す』と決めていたので不慣れな審判が五輪に出てくるということがありました。そういった過去の過ちもあるので、審判のレベルは上がっていて、いまの五輪にはいろんな大会で経験を積んできている方が起用されています。システムも出来上がっているので、ジャッジができない人は上の大会に出てこれません」
(※)シドニー五輪柔道男子100キロ超級決勝で日本代表の篠原信一はフランスのダビド・ドゥイエを内股すかしで投げるが「一本」と判断されず。投げられたドゥイエに「有効」のポイントが入った。
なぜ柔道のルールは変わっていくのか。変更の目的は「“投げる”や“固める”をダイナミックにすること」。“指導”の一因となる「かけ逃げ(偽装的攻撃)」を例に出して説明した。
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https://news.yahoo.co.jp/articles/de4b363d3c92b02caaa5917ea6c447e68a87ba5e?page=1
引用元: ・【パリ五輪】「誤審はほぼなかった」 パリ五輪柔道、現場とネットに温度差 角田夏実の母校監督が解説「ルールは改訂されている」 [冬月記者★]