私たちは、5歳になる前に亡くなる子供の数を1000万から500万人に減らしました。この死亡率をさらに半分に減らすことができるでしょうか。私たちは逆風に直面しています。多くの子供は最貧国で生まれていますが、現代社会には多くの危機があり、これらの問題への関心が薄れているのです。
──この50年間で、ワクチン普及によって1億5400万人の命が救われました。さらにそれを進めることができると考えますか?
間違いなく進められます。私たちは常にワクチンの開発を続けています。たとえば、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、子宮頸がんの予防になります。長い間、2度の接種が必要とされてきましたが、ゲイツ財団は、1度の接種で充分であることを示す研究に出資しました。研究者たちはワクチンの改良に余念がありません。ワクチンを組み合わせたり、新たな針を用いたり、簡単なシールタイプを開発したり……つまり、とても革新的な分野です。
──2024年末には、新型コロナウイルスの発生から5年が経ちます。この危機から何か得られる教訓はあったのでしょうか。
もしいま新たなパンデミックが始まっても、私たちには武器があります。この領域での研究が進展しているからです。しかし、その一方で、世界保健機関(WHO)の強化や、より良いデータシステムの構築については、なかなかコンセンサスが得られていません。
ワクチンと政府への信頼の重要性については、米国も含めて、思ったよりもこれらの原則に頼ることなく私たちはコロナ危機を脱することになりました。
パンデミックに対抗する道具を改善しようとする研究開発機関の大部分が、安価なワクチンの製造にも役立っていることは、良いニュースです。
──「信頼」について口にされましたが、誤った情報を拡散させる反ワクチン派も多数います。こうした流れに対してはどのように闘いますか?
豊かな国では、麻疹のような感染症で亡くなる子供はごくわずかなので、もしあなたの子供がワクチンを打っていないとしても、おそらく大したことにはならないのでしょう。その事実によって、デマが広がります。しかし、アフリカでは、ワクチンについての噂が広まると、死者の数はすぐに増大します。ワクチンの効果はここで証明されます。残念なことにワクチンがないと子供が亡くなるのです。
新型コロナウイルスのパンデミックのときには、ワクチン接種の情報が届かなかったために多くの高齢者が亡くなりました。私たちは情報に働きかけ続けなければなりません。その結果に異論の余地はないからです。しかし、なぜワクチンがこんなにも敵意を向けられるのか、知れるものなら知りたいものです。
──2023年、世界はポリオ(小児麻痺)の撲滅に近づきましたが、ガザ地区などでその問題が再燃し、緊急のワクチン接種キャンペーンが2024年9月におこなわれました。紛争の拡大はワクチン接種の進歩を水の泡にしてしまうのでしょうか。
そうなる可能性はあるでしょう。ゲイツ財団は、ポリオとの闘いにおける主要なスポンサーの一つですが、ポリオが撲滅されていない国が世界で2ヵ国だけあります。パキスタンとアフガニスタンです。撲滅したはずだったアフリカでも、再びこの病気が広がりました。私たちは、ナイジェリアやコンゴ民主共和国のような困難な地域を注視しています。
もしポリオが再び出現したら、すべての人にとっての大きな脅威となります。何十年も前に天然痘を根絶したときのように、ポリオを撲滅することができたら、麻痺する子供はいなくなります。3~5年のうちに結果を出せると思っています。問題はありますが、私たちは成功にかなり近づいているのです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/7a06fbfb2aeaac959a6d0c343d89c7bcf6f42d85?page=1
引用元: ・【ビル・ゲイツ氏】「ワクチンの効果は証明されている、ワクチンがないと子供が亡くなる、なぜワクチンがこんなにも敵意を向けられるのか、知れるものなら知りたい」