つまり、お酒を少し飲む人は全く飲まない人よりも心血管疾患のリスクが低いということが知られています。
しかし、米国の研究者たちが新たに行った研究(*1)の結果、
「非飲酒者に比べ心血管疾患のリスクが低くなる飲酒量」は存在せず、飲酒量が増えるにつれて心血管疾患のリスクは指数関数的に上昇することが示唆されました。
■飲酒量のJカーブには「好ましい生活習慣」が影響している?
飲酒と心血管疾患のリスクの関係について検討した観察研究はこれまで、非飲酒者や大量飲酒者に比べ、
少量飲酒者のほうがリスクは低いことを一貫して示しており、横軸を飲酒量、縦軸をリスクの大きさとしてグラフ化すると、J字型またはU字型のカーブになると報告していました。
しかしそうした関係は、節度ある飲酒者に多く見られる、好ましい生活習慣や、行動特性、社会経済的地位などの影響を受けている可能性があるとも考えられていました。
しかし、この問題について検討するために無作為化試験を行う(参加者をさまざまな飲酒量に割り付けて、その後の心血管疾患の発症率を比較する)のは倫理的に不可能です。
近年、飲酒と心血管疾患リスクの因果関係を分析するような場合に、メンデルランダム化解析という手法がとられるようになりました。
この方法は、観察研究では完全に解決できない交絡因子(AとBの関係について検討する研究の場合、
これらの関係に影響を及ぼす可能性のあるさまざまな要因を交絡因子と見なします)と、
逆の因果関係(AによってBが起こるように見えるが、実際にはBが先に起きたためにAが現れる場合)の懸念を取り除くことができます。
(中略)
■飲酒量で分析するとJカーブ、Uカーブは存在
対象としたのは、UK Biobankという研究に参加した、英国の37万1463人(平均年齢57.0歳、46%が男性)です。
UK Biobankは、遺伝的素因や環境要因が病気のリスクに与える影響を検討する目的で、大規模な集団を長期にわたって観察しています。
(中略)
■「飲酒習慣に関係する遺伝子」に基づく分析ではJカーブが消失
ここで著者らは、メンデルランダム化解析を行いました。飲酒習慣に関係する遺伝子として、
アルコール使用障害(アルコール分解能力の低さ)に関係する一塩基多型(長い遺伝子配列の中で、特定の1カ所の核酸塩基だけが変異している現象)で、
喫煙習慣、BMI、身体活動量、野菜の摂取量、赤身肉の摂取量、健康状態などに関係しないものを選びました。
これらの多型を持つ人はお酒に弱い、つまり、飲酒量が少ないと推測することができます。
実際に、参加者におけるそれらの多型の存在は、飲酒量と強力に関係していましたが、健康な生活習慣を示す6要因との間には有意な関係を示しませんでした。
そこでまず、従来から用いられている線形のメンデル無作為化解析を行ったところ、多型の存在に基づいて遺伝的に予測される飲酒量が1標準偏差(SD)増加するごとに、
高血圧のリスクが1.28倍、冠動脈疾患のリスクが1.38倍、心筋梗塞のリスクは1.37倍、脳卒中のリスクは1.26倍、心不全のリスクは1.39倍、心房細動のリスクは1.24倍になることが示されました。
続いて行った、非線形のメンデル無作為化解析では、飲酒量と高血圧リスク、冠動脈疾患リスクの間に非線形の指数関数的関係の存在が示唆されました。
すなわち、非飲酒者と比較すると、少量しか飲まない人でもそれらのリスクは高く、飲酒量が増えるにつれてリスクは急激に上昇していくと推測されました。
心筋梗塞、心不全、脳卒中、心房細動、そして、あらゆる原因による死亡も、飲酒量との間に同様の傾向を示しました。
今回得られた結果は、ごく少量しか飲酒しない人でも非飲酒者と比較した心血管リスクは高くなること、飲酒量とリスクの関係は直線的ではなく指数関数的で、
飲酒量の増加がリスクの顕著な増加をもたらす可能性を示し、適度な飲酒が心血管疾患のリスクを減らすという従来の定説を否定しました。
(全文はソースにて)
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00283/072600136/
引用元: ・【健康】“お酒の「Jカーブ」は存在しない” 米国で新たな研究結果…ごく少量の飲酒でも心血管疾患リスクは上昇 [ボラえもん★]
おー、なんちゃらなんちゃら~Jボーイ