事前座席指定が有料と言えば、格安航空会社(LCC)が一般的だ。LCCの場合、基本運賃が安い代わりに、事前座席指定や受託手荷物、機内食などをオプションで有料販売することで、収益としている。だが、大手航空会社では運賃がLCCより高いため、運賃に事前座席指定も含まれてきた。
しかし、座席の指定を一律にすると不公平が生じるのも事実だ。
普通席(エコノミークラス)の場合、足元が広い最前列や非常口座席、窓側席などは人気が高く、逆に3~4席の中央席などは人気がない。これらを同じように扱うには、どうしても無理がある。
■ANA・JALともに「足元が広い座席」が人気
大手航空会社の座席指定について、ANAとJALの例を紹介しよう。
国際線で、ANAは有料事前座席指定を2019年8月19日搭乗分から実施している。対象となっているのは、エコノミークラスの一部対象クラス(予約クラス)だ。
●利用料金(日本サイトの場合)
欧米オセアニア路線/ハワイ・インド・東南アジア路線/東アジア路線
・非常口に隣接する足元の広い座席:5500円/5000円/4500円
・上記以外の対象座席(窓側・通路側共通):2500円/2000円/1500円
※いずれも日本発着、1区間ひとり当たり
事前指定できる座席として、最も高く設定されているのは足元が広い座席である。普通席の場合は前後の座席間隔(シートピッチ)が狭いため、足元が少しでも広いほうが楽だ。トイレなどで席を立つ際にも、隣の人に気を遣わずに済む。
一方、JALも国際線の有料事前座席指定を2020年12月3日分から行っている。対象はANAと同じく非常口に近い足元が広い座席で、欧米路線で1万円からとANAより高い。
ANAもJALも、年間搭乗回数が多い上級会員や、エコノミークラスで予約クラスが普通運賃など高い運賃で購入している場合、事前座席指定を無料としている。ファーストクラスやビジネスクラスはどの運賃でも無料だ。つまり、一般的に有料化しつつも、一部の利用客に対して優遇する措置を取っている。
■外資系航空会社の多くはすでに有料
大手航空会社が事前座席指定を有料とする流れは、外資系航空会社ではいまや一般的だ。
例えば、ルフトハンザドイツ航空では、エコノミークラスの運賃は
・ライト
・クラシック
・フレックス
の3タイプ。ライトの場合、手荷物は機内持ち込み(8kgまで)のみ、予約変更や払い戻しは不可、事前座席指定や受託手荷物は有料だ。ヨーロッパではこのライト運賃がある大手航空会社はすでに多い。
利用条件を見ると、もはやLCCとほぼ変わらない。ヨーロッパでは日本以上にLCCが普及し、ビジネス出張で使われることも多い。その影響で、大手航空会社が経営難に陥ったり、経営合併したり、国有化される例も後を絶たない。運賃競争に加えて「少しでも収益を」というアイデアで、ライト運賃が誕生したと言える。
一方、日本の場合は欧米や東南アジアほどLCCが競合していない。国土交通省が発表した「我が国におけるLCCの参入促進」によると、LCCのシェアはコロナ前の2019年で
・国内線:10.6%
・国際線:25.8%
である。特に、国内線においては2015年の10%から横ばい状態が続く。国際線は年々増えていたものの、訪日人気がけん引していたことが大きく、2021年は3.3%まで急落している。
ANAもJALも国際線は有料だが、国内線の事前座席指定は無料だ。国内線は大手が無料、LCCが有料という従来のスタンスは維持されている。
■座席の次は手荷物も有料化か
飛行機での座席を重視する利用客は、一定数いる。
特に国際線の長距離路線の場合、足元が広い座席は人気が高く、その価値を知る客による争奪戦に近いことも起こる。たとえ有料にしても、その争奪戦で消耗するより、先に支払って座席を確保したい客は確実にいる。ビジネス客だけでなく、周りの客に気を遣う子連れ客もいるだろう。人気が高い座席を有料で販売して収益化を図る航空会社、そして利用客にとっても双方にメリットはある。
外資系航空会社で、エコノミークラスの上級クラスとして「エコノミーコンフォート」という座席を販売するところもある。プレミアムエコノミーと異なり、座席はエコノミークラスと同じだが、
・広いシートピッチ
・無料の事前座席指定
・手荷物の優遇
などが付く場合もある。
※以下リンク先で
メルクマール12.3
https://merkmal-biz.jp/post/26577
引用元: ・【航空】飛行機の座席「事前指定」 大手も続々有料化、いったいなぜなのか [七波羅探題★]