3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)第5回大会はヤクルト・村上宗隆内野手にとって、将来のメジャー挑戦へ向け格好の“予行演習”となる。
かつて巨人の名スコアラーとして鳴らし、2009年のWBC第2回大会では日本代表チーフスコアラーとして優勝に貢献した三井康浩氏が解説する。
村上は昨年契約更改交渉の際に球団から2025年シーズン終了後のポスティングシステムによるメジャー挑戦を容認された。
三井氏は「WBCで外国の投手をどれくらい打てるかに興味があります。外角の変化球にどれくらいついていけるかが鍵でしょう」と言う。
一般にMLBをはじめ外国では、ストライクゾーンがNPBに比べて外角にボール1個分ほど広く、逆に内角は狭いと言われる。
「というのは、外国には日本のように内角球を続ける投手がほとんどいない。
基本的に外角中心の配球なので、審判の目付けもどうしても外角へ向かい、外角のゾーンがワイドになりがちなのです。
WBCも同様です」と説明する。
過去、松井秀喜氏や筒香嘉智のような左の長距離砲タイプは、メジャー移籍当初、右投手の外角へ逃げていくツーシームに大苦戦した。
同じ左打者でも、イチロー氏はミート中心で、しかも三遊間などへゴロを転がし内野安打を稼ぐ“奥の手”もあったが、
バットを振り切るタイプには非常にとらえにくい球だった。
「WBCではMLB使用球と同じボールが使われるので、変化が大きくなります。
また、WBCには球数制限がありますし、メジャーの投手も球数を減らそうという意識が強いので、弱点と見れば集中的にそこを攻めてくる。
日本の打者は面食らうことが多い。どれくらいアジャストできるかでしょう」と三井氏は見どころを指摘した。
村上を抑えるために必要な“内角”と“高め” さらに「WBCの結果を受けて、NPB投手の村上に対する攻め方が変わるのかどうかも興味深いですね」と付け加えた。
仮に三井氏が敵チームのスコアラーで、レギュラーシーズンを通じて村上と対戦するとしたら、どんな対策を立てるのだろうか。
「基本的には内角に弱点がある打者です」。
ただし、「村上には内角球をきれいに芯でとらえようという考えが、さらさらないように見えます。
内角球は詰まって内野の頭を超えるヒットになってくれればいい、という感じ。
バッターというものは、内角球をうまく打とうと思った時点で打撃を崩しがちなのですが、村上には一貫してそれがない。
そうしておいてコースが甘くなればホームランにもなる」と分析する。
高めの使い方も、対村上のポイントになると言う。
三井氏は「高橋由伸(前巨人監督)の現役時代のことです。彼はハイボールヒッターで、すっぽ抜けのボール気味の高めの球をよくホームランにしていました。
そこで当時ヤクルト監督の野村克也さん(故人)は、投手陣に高めの力のある球を多投させた。
同じ高めでも、すっぽ抜けと狙って投げた球は全く違いますから、ファウルになることが増え、やがて高めの球に対する強さが発揮されなくなりました」と振り返る。
このケースは村上対策のヒントになるというわけだ。
「長打を防ごうと外角一辺倒になると、少し甘くなった時に長打にされてしまう。ある程度散らしていかなければならないので、となると、インコースと高めが鍵になると思います」とまとめた。
一方、村上自身の立場に立つと、2023年のシーズンはどんな世界が見えてくるだろうか。
「開幕からプレッシャーがかかることは避けられないでしょう。
3冠王を取った以上、今年もタイトルを是が非でも最低何か1つは取らなければならないと思うでしょうから、焦りとの勝負になる。
いかに自分の気持ちをコントロールして、去年の開幕のような自然体で臨めるか」と三井氏は注目する。
容易なことではないが、数年後にメジャーで成功するためにも、“村神様”のさらに進化した姿を見たい。
1/4(水) 7:20配信
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