東京新聞
コロナ感染で欠席した必修科目の単位が不認定になり、留年が決まった東大生が、処分の撤回を大学に求めた訴訟の控訴審判決があった。東京高裁は学生の訴えを却下した一審判決を取り消し、地裁に差し戻した。「単位認定は純然たる大学内部の問題」とする東大の主張に、高裁は疑義を呈した。中身の議論を願う学生。東大が入り口の法律論にこだわれば、時間ばかりが過ぎる。学生の声と向き合うのか。大学の姿勢が問われる。
◆異議申し立て後、成績が17点も下がる
この学生は東大教養学部理科3類の杉浦蒼大そうたさん(20)。2年生の春学期だった昨年5月、コロナで「基礎生命科学実験」の授業を2度欠席し、単位が不可に。欠席連絡の遅れを理由に、補講は1回分しか認められなかった。
東大生は入学後、教養学部に所属し、2年生の春学期までの成績を基に、3年生以降の専門学部に進む。杉浦さんは志望する医学部に進めず、留年になった。
意識が朦朧もうろうとする重い症状のため連絡が遅れた事情を説明し、救済措置を求めたが、担当教官は応じず、診断書の受け取りも拒んだ。さらに異議申し立て後、成績が17点も下がった。
東大の対応は不当で、合理的な説明もないとして、杉浦さんは8月に記者会見を開き、留年などの処分の撤回を求めて提訴した。
◆東京高裁「単位認定は純然たる大学内部の問題」に疑義
東京地裁は9月、口頭弁論を開かずに訴えを却下。東大の主張に沿って「単位認定は大学内部の教育上の措置。(留年は)処分でなく、単位不認定の結果だ」とし「処分は存在せず、訴えは不適法」と退けた。
杉浦さんは控訴。東京高裁は先月26日、単位不認定や留年について争われた最高裁の判例を引用し、「訴えが不適法と断じられず、さらに弁論が必要」とし、差し戻しを命じた。
杉浦さんの代理人の井上清成弁護士は「口頭弁論なしで地裁が門前払いし、さらにそれを高裁が覆すのは極めて異例」と強調する。
実体的な審理への道が開けたように見えるが、東大の姿勢は不透明だ。
井上弁護士らによると、高裁は判決時、原告と被告双方に最高裁への上告権の放棄を求め、差し戻し審での早期の議論を促した。
しかし、権利をすぐ放棄した杉浦さん側に、東大側は「関係法令に基づき、法務省の指示を仰いでいる」との文書を送付。上告期限の13日には「回答が来たが学内の稟議りんぎが間に合わない」と説明した。結局、期限切れの形で差し戻しが確定するという。杉浦さんの支援者は「法務省が留年の訴訟に指示を出すとは思えない。時間稼ぎだ」と批判する。長期化で訴えの利益を失わせ、訴訟を終わらせる戦略ではないかと訝いぶかる。
杉浦さんは差し戻し審と並行し、留年などの処分の執行停止を地裁に申し立てる方針だ。訴訟の行方にかかわらず、3年生に進んで学べる道を模索する。
◆大学側「症状が重篤であったとは認めがたい」と反論文書
引用元: ・【大学】コロナ感染で留年…東大生が撤回を求めた訴訟 異例の地裁差し戻しで問われる東大の姿勢 [ぐれ★]
コロナ関係なし