「電通をアテにできない」日本サッカー協会が20年以上支援されたJALからANAに乗り換えた裏事情

「ANAではこれまでも、JFAとJALの契約更新時期に何度も〝スポンサーをやらせてほしい〟と手を上げてきました。ところが電通の反対が常にありました。（電通の）窓口の担当者からすれば、長年支援を受け続けたJALを外すわけにはいかなかった。ですから私たちは『電通の壁に跳ね返されてきた』と思っています」

サッカー日本代表のスポンサードは22年間、JAL１強の状態だった。2010年にJALが経営破綻したときも真っ先に「サッカー日本代表の支援は続けさせてほしい」と申し出があったほど、強固な関係にあった。JFAは今回の契約更新にあたり、JALに対して協賛範囲の拡張をのぞんだ。日本代表チームだけではなく、選手や審判の育成、グラスルーツ（どんなところでもサッカーができる環境作り）などJFAの事業全般の支援を希望し、契約金もあがった。ただJALは年間２億（推定）といわれる条件をのむことができず、契約更新を断念。そこで長年、JFAとの契約を望んでいたANAに白羽の矢が立った。

ただJFAはANAと契約するために全面的に電通にお願いした、というわけではないようだ。ベテランのサッカー記者が明かす。

「ANAはアマチュア時代の日本サッカーリーグ時代からクラブチームがあって、JFAとのパイプはその頃からありました。ANAの幹部のご家族に早大ア式蹴球部（サッカー部）出身の方がいたようですが、JFAは窮地に立たされている電通に“おんぶにだっこ”できない。そのため、ANAとの契約にこぎつけるために古くからあるそのパイプを使ったようです。早大のサッカー部には、かつて日本代表監督をつとめ、現在副会長の岡田武史さんや川淵三郎さん、釜本邦茂さんといった、多くのJFA幹部も在籍していました」

これまで日本サッカー協会を筆頭に、電通から支援を受けてきたスポーツ団体は、数多くのスポンサーを持ってきてもらうことで金銭的に潤ってきたが、その分、電通に主導権を握られてしまう負の側面もあった。ただ、電通が東京五輪談合事件の中心にいたことがわかった今、イメージダウンは必至。信頼回復までかなりの時間を費やすだろう。他のスポーツ団体と比べても、電通との関係が最も深いJFAが初めて電通に頼り切らず、幹部が“営業”に動いた事実は、他のスポーツ団体にも今後、少なからず影響を与えるだろう。