厚生労働省の薬事分科会は２１日、英製薬会社ラインファーマが開発した人工妊娠中絶のための飲み薬「メフィーゴパック」について、製造販売の承認を了承した。厚労省は近く承認する方針で、国内初の経口中絶薬となる。厚労省は当面、服用する際は入院や外来での院内待機を必須として母体の安全管理を徹底する。

経口中絶薬は、手術と比べ女性の心身に負担が少なく、中絶の新たな選択肢になる。妊娠９週０日までの妊婦が対象で、妊娠の継続に必要な黄体ホルモンの働きを抑える「ミフェプリストン」と、子宮を収縮させる「ミソプロストール」を組み合わせて服用する。

国内の臨床試験では、薬を使った中絶を望む１８～４５歳の妊婦１２０人のうち、９３％が服用後２４時間以内に中絶に至った。６割に下腹部痛や 嘔吐おうと などがみられたが、多くが軽症か中程度の症状だった。

経口中絶薬は、世界で８０以上の国・地域で使われており、世界保健機関（ＷＨＯ）は安全で効果的な方法として推奨している。

審議を巡っては、厚労省が３月２４日に行うと発表したが、パブリックコメント（意見公募）に約１万２０００件に上る意見が集まり、分析に時間がかかるとして急きょ延期された。賛否の割合は２対１だった。

厳格な流通管理を求める声などがあり、各医療機関からは毎月、中絶件数を都道府県医師会に報告してもらう。

関東中央病院産婦人科の稲葉可奈子医長の話「妊婦には、出血や子宮収縮による腹痛を伴うなど、簡単に中絶できる薬ではないことを理解してほしい。医療機関側は出血などに緊急対応できる備えが必要だ。中絶は自費診療だが、予期せぬ妊娠は誰にでも起きうるため、保険適用や公費補助などの議論を進めるべきだ」