飲食店や簡易宿所(簡易宿泊施設)が立ち並ぶ西成のあいりん地区。淡路屋はその一角にある。大人4人ほどが座ることのできる長椅子が設置され、まるで屋台のような店構えだ。
大前さんがこの地で店を始めたのは平成29年10月。それまでは紆余(うよ)曲折の人生だった。
高校を中退し、仕事を転々とした。暴力団に入り、けんかや恐喝を繰り返し、薬物に溺れて服役したことも。21年にはラーメン店を開業したが、人間関係のトラブルで閉店。その後、フィリピンへ渡った。
いつしか所持金も尽き、首都マニラ郊外の街で3日間、空腹に耐えながらうずくまっていたとき。高齢の女性が声をかけてくれた。「おなかが空いているでしょう」。ジェスチャー交じりでこういわれ、女性の家に招かれた。家に入ると山盛りの米と現地の肉料理をふんだんに振る舞ってくれた。
「本当に救われた」。涙をぼろぼろ流しながら食べたことを今でも鮮明に覚えている。
「受けた恩を今度は周りの人へ返したい」と決意。帰国して淡路屋をオープンさせた。
おなか満たせば心も…
「一杯無料のかけうどん」を始めたのは新型コロナウイルスが流行したころ。客足が遠のき、仕入れたうどんを廃棄する日もあった。「どうせなら」と生活が困窮している人を対象に無料提供を始めた。
鰹(かつお)風味のやさしいだしのうどんはほっとする味。かけうどんは250円で、一般客にとっても安価だ。
「おなかが減っていると『恐喝したろ、万引したろ』とか悪いことをつい考えてしまう。おなかが満たされ心に余裕ができれば、そんなことは考えへん」。自身の経験からこう力説する。
ある日、80代ぐらいの作業着姿の男性が店にやってきた。男性は店の前で帽子を脱ぎ、「一杯だけ食べさせてください」と頭を下げた。
泣きながらうどんを食べる男性。「自分の体が動くうちは国の世話になるのは筋違いだ」と生活保護を受給せずに、建設作業員の仕事を転々としていたが、3日間食事をしていなかった。
しばらくして男性はまた店にやってきた。「あれから仕事が見つかり、今は住む場所もあります。ありがとうございました」と礼を言われた。日焼けした男性の表情は気力にあふれていたという。「たかがうどん一杯やけど、それで元気に立ち直ってくれたら本望。いつでも食べにきてほしい」と振り返る。
ユーチューブ配信も
2年前からは「西成キンちゃんのワッショイTV」と題したユーチューブチャンネルを開設。地元の飲食店を紹介するなど西成の面白さや魅力を動画で伝えている。
今では大前さんと話すことを目的に店を訪れる若者も多い。「ゆっくり食べてってや。カップ麺のほうがうまいけどな」。冗談を交えながら気さくに笑う。ときには人生相談に耳を傾けることもある。
「西成は治安が悪い面もあるが、人情深い街。昔悪さをしていたが、今は再起を懸けて努力する前向きな人もたくさんいる。そんな『西成のいい部分』にもっと光が当たるよう、みんなで盛り上げていきたい」。かつて自分が励まされたように―。〝西成愛〟を胸に恩返しの日々は続く。(鈴木源也)
2023/9/4 08:00 産経WEST
https://www.sankei.com/article/20230904-UDFCC5XDP5KOLM23TCGJ7SYWDI/
引用元: ・「一杯無料のかけうどん」に込めた愛と恩返し 西成の元極道店主がドン底で見た人情 [蚤の市★]
他人が全て空腹で恐喝万引きするような人間ばかりと思うなよ
悪事を働かないだけで、人情味に欠ける人は大勢いる
悪党つってもすべての人に非情なわけではないし、特定の人に対しては普通以上に情が深かったりする
その情の部分が取り上げられているんやろ
それが、人間えら過ぎもしない貧乏過ぎもしない、ちょうどいいくらいってとこなんだ
だしがおいしい
よっしゃ恐喝したろ!とはならんやろ普通はまともに働くわ
汁がメインでうどんはおまけ
お汁飲み干すと五臓六腑に染みわたり満足する
うどんは残してもいいわ