新型コロナに感染したのは2020年の前半であり、初期症状は軽かったものの、それからは単なる疲れとは到底言えないほどの疲労感に苦しんだ。
「まるでひどく深刻な病気にかかったかのようでした」とカズンズさんは言う。
それは「ドロドロとした深い脱力感」で、軽く体を動かすだけで症状は急激に悪化した。そして2021年末、ようやくトレーニングを再開できるところまでこぎつけた。
長い回復期を耐えたカズンズさんに最後まで残った症状は、ごく軽度の「体位性頻脈症候群(POTS、ポッツ)」だった。
これは自律神経障害の一種であり、たとえば座っている状態から立ち上がったときなど、体勢を変えた後に心拍数が異常に上がることを特徴とする。
POTSの患者が訴える症状は、めまい、疲労感、ブレインフォグ(脳に霧がかかったようにぼんやりする状態)、胃腸障害など多岐にわたる。
カズンズさんはPOTSとともに生きる数百万人の患者のひとりだ。米啓発団体ディスオートノミア・インターナショナル(国際自律神経障害の会)によれば、POTSの患者数は、新型コロナの流行が始まって以来、倍増したと推測されている。
この病気の発症要因としては、妊娠、手術、そして新型コロナのようなウイルス性疾患などが知られている。
POTS患者のうち一部の人々は、「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」と呼ばれる疾患を併発している。これは運動後に症状が悪化する「労作後倦怠感(PEM)」を特徴とする。
PEMがある患者が無理を押して体を動かせば、症状の大幅な悪化につながりかねないが、POTSからの回復に向けた運動プログラムにおいては、まさにそれが推奨される場合が多い。
その結果、POTSとME/CFSを併発している患者の多くから、運動に関する不適切な指導を受けたとの声が上がっている。
「医学部でも、ME/CFSやPOTSについては教えてくれません」。2020年に新型コロナに感染した後、両方の疾患を発症した米イーストアラバマ医療センターの研修医スジャナ・レディさんはそう語る。
トレーニングを再開する準備ができたと感じたカズンズさんは、主治医に相談したところ、自律神経障害を改善するための治療法は運動だと助言された。
医師の賛成を得て、カズンズさんは週3回の運動から徐々にトレーニングに復帰した。
トレーニングを続けて1年がたったころ、症状が大きくぶり返し、自律神経障害は軽度から重度へ悪化した。原因はトレーニングのし過ぎだとカズンズさんは言う。「要するに、自律神経障害とPEMが蓄積された結果だったのです」。
カズンズさんをはじめ、多くのPOTS患者が実感しているのは、運動と自律神経障害の関係は、研究で示唆されている以上に複雑だということだ。
米疾病対策センター(CDC)の最近の推計によると、現在、米国の成人の6%が新型コロナ後遺症の症状を抱えているという。
新型コロナ後遺症患者の79%がPOTSの基準を満たしていたという研究もあり、患者や医療従事者は、症状の管理に運動をどのように取り入れるかについて、再評価が必要だと感じている。
運動は現在、POTSの治療で第一の選択肢とされているが、新型コロナ後遺症患者を対象とした調査では、身体活動や運動などを主なきっかけとして85.9%が後遺症の症状の再発を報告した。また、患者からは、運動プログラムの一部は従うのが困難だったとの意見が出ている。
これを受け、英国立医療技術評価機構(NICE)は、新型コロナ感染後の倦怠感の治療で段階的運動療法を用いるのは適切ではないかもしれないと注意を促している。
引用元: ・【立ち上がると動悸、めまい】新型コロナウイルスの流行が始まって以来、倍増した体位性頻脈症候群(POTS、ポッツ)の患者数
トレーニングし過ぎでもぶり返すんだね
アスリートのトレーニングが過ぎた場合だけど