その後、親しくなったBさんから、毎日のように優しいメッセージが届きました。朝起きたら「おはよう」、夜には「おやすみ」と声をかけてくれて、Aさんが悩みを打ち明けると「いつでも話を聞くよ」と熱心に聞いてくれる。
そんな関係が約5年間続き、中学1年生になったAさんは、ついにBさんと直接会う約束をします。
初対面のその日、Aさんの前に現れたのは「優しいお兄さん」ではなく中年男性でした。そしてAさんは彼に多機能トイレに連れ込まれ、性被害に遭います。
その後、わが子の身に起きたことを知ったAさんの両親が被害届を出し、Bさんは逮捕されます。彼の職業は教師でした。しかし、Aさんは彼の優しさを今でも信じており、「あの人は悪くない」と言っているそうです。
子どもの性的グルーミング被害を防止するために、この事例から学べることがあります。
この事例からわかることは、子どもに性加害を行おうとする加害者側の執着心の強さです。Aさんとのやり取りに、加害者は約5年もの歳月を費やしています。幼いAさんはこれを「優しさ」と解釈しましたが、実際は「子どもに性加害がしたい」という異様な執着心の強さにほかなりません。
加害者の多くは、1週間や1か月の短期で結果を出そうとは思っていません。数か月、数年かかってもいいから加害行為を成し遂げたい。そうした強迫的で貪欲な欲望があるからこそ、「優しい理想のお兄さん」を演じ続けるのです。
上記の事例では、大学生を名乗っていた性加害者は、Aさんだけでなく、それ以外にも複数の子どもたちにメッセージを送りつけ、種を蒔いていたことがわかりました。X(旧Twitter)やInstagramでも同様のことが起きています。(抜粋)
引用元: ・【社会】ゲームで仲良くなったお兄さんと会ってトイレでレイプされた中学生、「あの人は悪くない」と洗脳状態…子供を狙うオンライングルーミングの恐怖
大人は恐ろしい
オンライングルーミングにおいて、性加害者の多くは孤立している不安定な子どもをターゲットにします。性加害者たちに話を聞くと、彼らはよく性的グルーミングの過程を「(子どもの)承認欲求を転がす」と表現します。家族や学校に問題を抱えているなどの理由から孤独を感じている子どもの自尊心をくすぐり、慰めることで、信頼を得ているのです。結果的に、子どもは無条件に私を受け入れてくれたと加害者自身の承認欲求は満たされるのです。
一方で、小中学生の子どもにとっては「大学生の友達がいる」という事実は友達に対する“自慢のネタ”にもなります。加害者側はそうした心理も巧みに利用しています。
■グルーミング被害を防ぐために
「子どもと近しい関係にある人」「面識のない人」によるグルーミングを防ぐためには、プライベートゾーンの大切さを子どもにしっかりと伝えておくことが大切です。相手が誰であれ、プライベートゾーンは勝手に見たり、見せたり、触らせたりする場所ではないという原則を理解することが、性被害予防になります。
また、「オンライングルーミング」被害を防ぐためには、ネットリテラシー教育が重要です。子どもがSNSを使い始める前に、安全のためのルールを家族間で再確認しておくことをお勧めします。
オンライングルーミングは他のグルーミングよりも時間を要するため、その間に大人が介入できたらベストでしょう。
PROFILE 斉藤章佳さん