遺族「お金が欲しい」←金以外に慰謝する方法はないのにこれを叩く日本。訴訟費用に窮する状態なのに

読売新聞オンライン
講演会で犯罪被害者遺族のやるせない思いを語った美佳さん（神戸市中央区で）

犯罪加害者が、裁判所に命じられた遺族らへの賠償金を支払わないケースが相次いでいる。１３年前に神戸市須磨区で発生した傷害致死事件で息子を失った母親も「犯した罪と向き合ってほしい」と待ち続けたが、事件を主導したとされる男性受刑者からはついに一回も支払われることなく今年７月、時効を迎えた。再提訴すれば請求権を更新できたが、裁判費用の負担から断念。「泣き寝入りするしかないのか」と母親は嘆き、国による賠償金立て替えなどの制度改善を訴えている。（高田果歩）

【図表】「ここ１０年で治安は悪くなった」と回答…思い浮かべた犯罪のトップは？

事件は２０１０年１０月、神戸市須磨区の路上で発生。釜谷圭祐さん（当時１９歳）が「妹を連れ回している」と思い込んだ男性受刑者らに暴行され、命を落とした。神戸地裁は１３年２月、「無抵抗の被害者に強い暴行を執拗（しつよう）に加えた」として懲役１４年の実刑判決を言い渡した。さらに、母・美佳さん（５８）らが利用した損害賠償命令制度によって賠償金の支払いも命じられた。

しかし、損害賠償を請求できる権利は１０年でなくなる。一部でも支払われればその都度更新されるが、一度もなかったため今年７月６日に時効を迎えた。美佳さんは「時効を待っていたとしか思えない」とやるせない思いを吐露し、「お金が目的ではない。賠償責任が続くことで、自分の罪への責任も負い続けてほしかった」と唇をかむ。