https://news.yahoo.co.jp/articles/b9eb1004205bea3bd32af72e022b3cf00f0b13ba
引用元: ・「2兆ドルを削減する」イーロン・マスク氏があぶり出す米国政府のムダ遣いの数々 [662593167]
今後米国では歴史上稀にみる大規模な行財政改革が行われる可能性が見えてきた。トランプ次期大統領は11月12日、「政府効率化省(Department Of Government Efficiency:DOGE)」を新設し、トップには、イーロン・マスク氏とインド系実業家で若き共和党大統領候補として人気を博したヴィヴェク・ラマスワミ氏を起用すると発表した。 トランプ氏はDOGEを設立する目的について 「官僚機構を廃止除外し、多くの余計な監督管理、浪費支出を削減し、政府機構を整備し立て直す」などと発言している。「米国を救う運動」を展開するためには、公務員体系と政府支出構造を全面的に改革することが重要だと説明している。
イーロン・マスク氏は11月13日、XにおいてDOGEの名称でアカウントを作り、そこで政府支出の無駄について投稿している。たとえば11月18日の投稿では、政府が行っている無駄な研究の具体例として“テキーラもしくはジンがサンフィッシュ(ブラックバスなど肉食性淡水魚の総称)の攻撃性を高めるかどうかに10万ドル”、“コカ◯ンが日本のうずらに対してより性活動を積極的にさせるかどうかに100万ドル弱”、あるいは“アポロ計画における月面着陸の正確な表現などに関して75万ドル”を支出していると記している。
中には“ペンタゴンは8240億ドルの支出について完全に説明することができない”、“2023年の政府支出計画の内2360億ドルが不当な支出である”とか“2000億ドルの新型コロナ救済資金は詐欺である”など、やや乱暴な表現で、大きな金額の無駄を指摘したりもしている。
■政府予算から2兆ドルを削減する 11月23日のツイートでは“米国は現在、超高速で破産に向かっている”と題して、財政状況などのデータを提示している。それによれば、2023年の政府支出は6兆1600億ドルであるのに対して収入は4兆4700億ドルしかない。財政赤字は1兆6900億ドルに達しており、2001年の黒字を最後にずっと赤字状態が続いていると指摘している。
債務における国債の比率が高まり続ける中でパンデミックが発生、それへの対応として大量の国債を発行したものの、経済の回復速度を超えて債務が増加している。FRB(連邦準備制度理事会)はインフレ対策として金利を引き上げたがそれにより、支払利息が増えている。さらに、FRBは国債を売却、金融システムの正常化を進めたことで、長期国債に金利上昇圧力がかかった。
“現在428機関ある中で99機関を残せば十分だ”、“政府予算から少なくとも2兆ドルを削減する”などと、具体的な目標を示している。
DOGEトップの連名で11月20日、政府改革のためのDOGE計画と題した寄稿文をウォールストリートジャーナルに掲載しているが、公共放送や国際組織などに拠出する資金を減らすことで、すぐに5000億ドルの政府支出を削減できるとしている。
行財政改革を行うにあたり、官僚組織はもちろんだが、行政が簡素化されることにより収益機会の一部を失う軍事関連企業、公的機関を顧客に持つその他の企業、利権政治家から、既得権益層を主要顧客とするマスコミに至るまで、多くの組織が彼らに対して強い敵意を示すと予想される。そもそも、DOGEが議会で承認されてはじめて正式な組織となるが、そこから既に超えなければならないハードルが存在する。
■行財政改革が実現すればマスク氏のビジネスに大きなメリット 行財政改革を指揮するイーロン・マスク氏は、もし、それが中途半端なものに終わり、既得権益側の政治力、経済力が温存されたとすれば、ビジネス環境が大幅に悪化しかねない。一方で、政治活動を行い成功した場合のメリットは計り知れない。
AIでは新会社「xAI」を設立、OpenAIの独占を打ち崩す姿勢を見せている。SpaceXを通じた航空宇宙産業、テスラを通じた新エネルギー、スマート自動車産業、Xを通じたSNS事業などを展開しているが、DOGEによる行財政改革が成功すれば、政府人員の削減とともに、多くの規制も削減、緩和されることになる。それは彼の事業環境を格段に良くするものと予想される。政府側に付くことにより人脈は広がり、信用度は高まり、資金調達力はさらに高まる。別の一面では、イノベーションが加速され、それが社会への大きな貢献となって有権者に還元されよう。利益相反を盾にイーロン・マスク氏の政治登用を阻止すれば、行財政改革を一気に進められるといった、またとない機会を逃すことになる。
日本では11月17日、兵庫県知事の出直し選挙が行われ、斎藤元彦知事の再選が決まったが、県内のPR会社が「公報全般を任された」とインターネット上に投稿したことで、公職選挙法違反の疑いがかかっている。もちろん、法律を遵守しなければならないのは当然だが、一方で、米国の大統領選挙、政治の在り方をみると、現在の日本の公職選挙法についてこのままでよいのかと考えさせられる。
有権者の便益の総和を最大化するような正しい政治を行うためには優秀でタフな人材を登用する必要があるが、そのような人材は苦労を上回る見返りがなければ政治に参加しない。だとすれば、カネと政治は切り離せない。