HPVは多くの人が一生に1度は感染すると言われることもある非常にありふれたウイルスですが、性行為などの身体的接触によって広がると、子宮頸部(けいぶ)、膣(ちつ)、陰茎、口などの体細胞に感染する可能性があります。
そして、HPVに感染するとウイルスの遺伝子が細胞のDNAに組み込まれて、制御不能な細胞増殖から人体を守るタンパク質の合成システムが阻害されてしまい、最終的にがんになるリスクが発生します。
HPVは、男性に多い中咽頭(ちゅういんとう)がんの原因になることが知られており、男性にとっても決して無関係ではないウイルスですが、子宮頸がんの90%以上がHPVによって引き起こされるなど、特に女性にとっては受胎能力や命を失うことにもつながる重大な問題です。
HPVワクチンは子宮頸がんの発生率を90%減少させることが示されており、世界には大規模なワクチン接種プログラムにより撲滅が目前になっている国もあります。
例えば、イギリスでは在学中にワクチン接種を受けた若い世代は、ほかの世代よりも子宮頸がんの発症率が劇的に低いことが報告されています。
以下のグラフではそのことが示されており、ワクチン接種率が89%だった最年少のグループ(赤線)は最年長のグループ(青線)に比べて子宮頸がんの発生率(縦軸)は約87%も低かったとのことです。
その一方で、HPVワクチンへのアクセスが十分ではない国も少なくありません。以下は、2022年における子宮頸がんの新規発生率を国ごとにわけたものです。アフリカや南米では、女性10万人当たりの発生率が高いことが示されています。
さらに、G20を構成する世界の主要国19カ国の子宮頸がん発生率のグラフを見ると、残念ながら日本は欧米などに比べて子宮頸がんになる女性が多く、南米並みであることがわかります。
Our World in Dataは、子宮頸がんが依然として多い理由のひとつとして、貧困国に住む女性が早期検査を受けられないことを挙げています。そして、もうひとつの理由はHPVワクチンの接種率が低いことです。
以下は、HPVワクチンの定期接種を提供しているかどうかを、全国的(青緑色)、実施していない(赤色)、一部地域のみ(オレンジ色)で色分けしたもの。アフリカやアジアではワクチンの導入があまり進んでいないことがわかります。
なお、日本はワクチンの定期接種を実施している国ですが、以下のグラフに示されている「HPVワクチン接種が特に推奨される年齢である15歳までに接種を受けた女性の割合」で日本は7%と、50%のアメリカや65%の韓国に大きく水をあけられてしまっています。
ワクチン接種が進まない問題を抱えた国の事例を、Our World in Dataはふたつ挙げています。ひとつは中国で、同国では一部の都市や地域でHPVワクチンが提供されるようになってきているものの、全国的には提供されていないとのこと。そのため、中国では全国的なワクチン接種率が非常に低く、2020年における中国のHPVワクチン接種率はわずか3%にとどまっているとの報告があります。
もうひとつの事例は日本で、Our World in Dataは「日本ではHPVワクチンが妊娠合併症に関連しているという不正確なメディア報道により、HPVワクチンが2013年から2021年まで中止されていました」と指摘しました。
Our World in Dataは、「HPVワクチン接種が広く普及し、子宮頸がん検診が定期的に行われている国では、既にがんの発生率が劇的に減少しており、これはHPVによる子宮頸がんは効果的に根絶できるということを実証しています。
しかし、多くの国は出遅れており、ワクチンへのアクセスに障壁がある国もあれば、誤解が広がってしまったことで摂取率が低迷している国もあります。
HPVワクチンは、一般的なタイプのがんを効果的に排除する貴重なチャンスですので、ワクチン接種と検査に投資することで、世界は毎年何十万人もの命を救い、避けられる悲劇を防ぎ、子宮頸がんを過去の病気にすることができるでしょう」と述べました。
しかも、がん予防にならないって厚労省が但し書きしてたような
それなのになんで女だけワクチン無料なの?