〈トランプの保護主義は正しい。しかし…〉トッドが語る米国産業が復活できない理由「優秀で勤勉な労働者の不足はすでに手遅れ」
https://bunshun.jp/articles/-/75809
引用元: ・エマニュエル・トッド 「ロシア人たちは自衛のための戦いをしている。真の脅威はロシアではなく米国」 [306759112]
トッド 西洋の人々が「ロシアによるウクライナ侵攻」の意味をきちんと理解していない、と私は感じていました。
「ロシアが攻撃を仕掛けて西洋側が攻撃を受けた」と西洋の人々は見ていた。
しかし、欧州やNATOがロシアに向かって東方に拡大していたことが、この戦争の背景にあります。
ロシア人たちは「自分たちが攻撃を受けてきた」と感じているわけです。ですから、ロシア人たちは「自衛のための戦い」をしていると考えています。
私は西洋人のこうした思考のメカニズムに不安を感じ、本書によって「誤った現実認識」を訂正しようとしたのです。
本書では、実際に、欧州とNATOがロシアに向かって拡大していき、それをロシア人たちが「自分たちへの攻撃」と感じてきたことを描いていますが、
本書のテーマは「西洋の虚偽意識」です。西洋がいかに間違ってきたのかを章ごとに追っています。
ロシアの実力を過小評価し、ウクライナ人の真の動機を見誤り、東欧諸国の反露感情を理解せず、自らが直面する「西洋の危機」、
すなわちEUに訪れている危機、さらには最も根本的な危機である、米国社会が直面する長期にわたる危機を認識できていませんでした。
まず軍事的観点や覇権主義の観点から見ると、「西洋」とは「米国の支配圏」です。欧州と極東、とくにドイツと日本を含みます。
他方、文化面――すなわち価値観、権威や不平等や民主主義への態度――から見ると、日本とドイツは米国と大きく異なります。
これは「家族システム」の違いに由来しています。
「狭義の西洋」とは、もともと「自由主義(リベラル)」という政治的価値観によって規定された「西洋」で、英米仏からなります。
「西洋の敗北」とは、究極的には、これまで世界を支配してきた「自由主義的(リベラルな)西洋」の崩壊を意味しています。
米国が世界各地で引き起こしている「戦争」や「紛争」とは何を意味しているのか。私はこう見ています。
ドイツや日本のような国々を支配し続けるためにこそ、米国はこうした国々を戦争や紛争、とりわけロシアとの戦争に巻き込んでいる、と。
真の脅威はロシアではなく米国
なぜ私はこの本を書いたのか。まず「歴史の現実」を理解したい、という歴史家としての思いからです。
私は長年研究を続けてきましたが、その成果を一冊の本にまとめて、いま起きている危機を理解することは、研究者としての喜びです。
同時に、「西洋の一市民」として書いた本でもあります。私は西洋人であり、フランス人です。
事態の鎮静化に貢献するために、「真の脅威はロシアではなく米国であること」を米国の同盟国や従属国の人々に明らかにしようとしました。
ロシアは安定化に向かっている国で、「主権」という考えに基づいて、自らの政治的空間の保全を目指しているだけなのです。
世界の中心にあって崩壊しつつある米国は、我々すべてを吸い込もうとしています。
つまり、EUの敵は、ロシアではなく、ますます危険な方向へと我々を引きずり込もうとしている米国なのです。
◯プーチン