陸・海・空、さらにはサイバー空間を舞台に総力戦が展開され、両軍で100万人以上が死傷したといわれるロシアのウクライナ侵攻。
海の向こうでは何が起こっていたのか。10月に退任した前駐ウクライナ大使に聞いた戦時下の緊迫、指導者の横顔、そして終戦への道筋。【松田邦紀/前駐ウクライナ大使】
※略■開戦後にどのような仕事をしていたのか
開戦の直前まで、ロシアウォッチャーや学者の中には「戦争に突入することはない」という見方も根強く存在していました。
いかにプーチンの独裁といっても、ロシアは一応、国連安保理の常任理事国なのだから、というわけです。
しかし現場にいた感覚でいうと、22年の年明け以降は「今日か明日か」という感じで、いつロシアが攻め込んでもおかしくないという緊張感がありました。
※略
■日本人が思っている以上にウクライナで高い評価
※略
確かに今回の戦争があるまでウクライナにとっても日本はあまたある「外国」の一つに過ぎなかった。
ところが、そんな「one of them」でしかなかった日本が、開戦後、いの一番に「法の支配に基づく国際秩序を一方的に武力で蔑ろにした」とロシアを断罪したわけです。
開戦直後、ヨーロッパでは依然として「旧ソ連の内輪もめ」「単なる領土紛争」と事実を矮小化する声もあった。
そんな中、遠く離れた日本から突然上がった「今日のウクライナは明日の東アジア」という連帯の声は日本人が思っている以上にウクライナで高い評価がなされていました。
日本では、湾岸戦争の頃にあった「カネは出すが血は流さない」という批判がトラウマのように染みついていますが、
少なくとも私の在任中、ウクライナでそのようなことを言われた経験は一度もありません。
■「日本にしかできないこと」とは?
「支援」と一口にいっても軍事支援、財政支援、人道支援、さらには有事後の復旧・復興支援とさまざまなチャンネルがあります。
軍事支援も、最初の頃は「とにかく武器、弾薬」なんですが、次第に国内の軍需産業の基盤が整ってくると「工作機械の方がありがたい」と需要の中身がシフトしていく。
また財政支援も「自国の景気が悪いのに他国にカネを渡すのか」と批判されがちですが、実はかなりの部分はローンなんです。つまり返済してもらうことが前提になっています。
※略
■ゼレンスキー大統領の卓越した能力を確信
私には大使在任中、何度かゼレンスキー大統領と直接会って話す機会がありました。
ある時彼から聞かれたのが、日本が第2次世界大戦に敗れた後、焼け野原からどのように国を再建し復興を遂げたか、ということでした。
敗戦後、復興のためにどのような役所を設け、どのような法律を作ったのか、人材育成はどうしたのか……。
また、毎年のように発生する地震や水害などの自然災害に対して、例えば東京の中央政府と被害にあった地方自治体とがどのように協力しているのか。
自分たちでは気づきにくいですが、敗戦や頻発する天変地異を経験している日本は「復旧・復興」の具体例をパッケージで提供できる数少ない国であり、
大統領は失敗例も含めて、その経験とノウハウに非常に興味を持っていました。
ご存じの通り、ゼレンスキーという人はもともと役者です。
その経験があるからか、彼は戦時下においてどのように振る舞えば部下や国民の心を奮い立たせることができるかをよく分かっているようでした。
一方で、自分が外交や安全保障、貿易や金融といった政治の専門知識に長じているわけではないことも、しっかりとわきまえている。
大統領に関するそんな人物評を彼の側近にぶつけてみると「彼は役者であると同時にプロダクションの社長でもあるんだ」という答えが返ってきました。
つまり、彼は集まってくる人材の「才能(タレント)」を見抜く力に長けていて、人材を適材適所で使うことができるのだと。
ゼレンスキー大統領のそのような特徴は、政府内のドメスティックな人材登用に限らず、国際支援の枠組みにも生かされているように思います。
彼はどの国に何を頼めば最も効率の良い支援を受けられるかがよく分かっている。
日本の復興の歴史について尋ねられた時、私はそれを確信しました。
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シリア暫定政権がウクライナと戦略的パートナーシップ構想 ロシアの影響力低下加速も [ごまカンパチ★]
http://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1735738850/
引用元: ・「思っている以上にウクライナは日本を評価していた」 前駐ウクライナ大使が明かす開戦時のリアルとゼレンスキーの卓越した能力 [ごまカンパチ★]
まさかその保証人もロシアに滅ぼされるとは思ってなかっただろうな