2025/07/17 6:00
https://president.jp/articles/-/98455
プレジデントオンライン(前略)
終末期医療をやめる費用対効果は…
そもそも「終末期の過度な延命治療」がどれだけ医療財政を圧迫しているのか説明できるだろうか。
管だらけの寝たきりの人の写真を見て、ただなんとなくイメージで莫大な費用が浪費されていると思い込んでいるだけではないか。
イメージでなく、エビデンスベースで説明しよう。
2015年の研究(鈴木亘「レセプトデータによる終末期医療費の削減可能性に関する統計的考察」、『学習院大学 経済論集』第52巻 第1号、2015年4月)をわかりやすく解説した記事がある。
ここでは死亡前1年間の1人当たり医療費の月別グラフが示されており、たしかに死亡前3カ月くらいから医療費が大幅に増え、最も増えるのは死の1カ月前と読み取れる。
だがデータを細かく分析すると、最後の1カ月に医療費を急増させているのは「胃瘻を作られてベッドで寝たきり」という長期入院患者でなく、自宅で生活できていた人が突然入院、手を尽くした結果亡くなってしまった人、いわば急性期患者だったのだ。
少し古いデータだが厚労省保険局は2002年度の「終末期における医療費(死亡前1カ月にかかった医療費)」は約9000億円と発表しており、これは同年度の「医科医療費」に占める割合で言うと3パーセント程度だ。
しかもこの9000億円には、先述の急性期医療費が含まれている。これらを「終末期の過度な延命治療」として削減せよとなると、救命救急医療・急性期の集中治療までも全否定してしまうことになるのだ。
高齢者医療全体を見てみても、1年間にかかった高齢者医療費のうち終末期医療、つまりその1年の間に亡くなった方々にかかった費用は1割程度。あと1年で亡くなると思われる高齢者に医療をまったくおこなわないというフィクション映画のような非人道的行為をもってしても、医療費に与えるインパクトはきわめて限定的なのだ。
こうして“1億総序列化社会”が誕生する
「70歳以上の医療費は年間22兆円」「85歳以上になると一人あたり100万円超」との数字を掲げ、延命治療を自己負担にすればあたかもこれらが解消できるやに有権者に思わせるこの公約が、いかにエビデンスに基づかないものだと容易に理解できるだろう。
いや、この公約からは「過度な延命」にとどまらず、高齢者にたいする医療そのものが無駄であり、これらをすべて削減したいやにも読み取れる。彼らのいう「日本人」に高齢者は含まれていないようだ。
若者から見れば、高齢者の医療など無駄にしか見えないかもしれない。だがこの政策で今は「日本人」として認められている人も、いずれ高齢者となって「日本人」から除外され、生存権さえ失う可能性があることは認識しておくべきだろう。
いや、今の若者も例外ではない。命の線引きを公然と政策に掲げ、ファーストとそうでない人、つまり人間に優劣をつけたがる政党が政権に加わると、出自や性別はおろか、思想や生活習慣、就労状況から納税額までもが「日本人」として適格か、優れているか、生存するに値するかといった政治的介入を受け、私たちにさらなる分断をもたらすだろう。
すなわちファーストとされるはずの「日本人」すべてに優劣がつけられる“1億総序列化社会”の誕生だ。「寝たきりの認知症高齢者は社会の役に立っていないお荷物」などと嗤っている若者にも、突然「あなたは納税額が少ないので日本の役に立っていませんね、公的サービスを使うのは控えてもらいます」といった通知が国から来るかもしれない。
「そんなの今の私には関係ないよ」と思っている人が、ゆくゆく後悔しなければいいのだが。それこそ私には関係ない、か。
※全文は引用先で
引用元: ・寝たきり老人には「生きる価値がない」のか…参政党の公約「延命治療の全額自己負担化」に現場医師 [七波羅探題★]
生きる価値ねーじゃん自民になんか入れてさ

