埼玉県のウェブサイトには、「県内駅・利用者数ランキング(令和5年度・1日平均)」が掲載されている。事業者をJRに限定した場合、上位3駅は以下のとおりとなる。・1位:大宮駅…48万8786人
・2位:浦和駅…17万6426人
・3位:川口駅…14万8002人
3位の川口駅には、京浜東北線、上野東京ライン、湘南新宿ラインの3路線が通っている。しかし、停車するのは京浜東北線のみで、他の2路線は通過してしまう。にもかかわらず、1日平均の利用者数は約15万人に達し、乗り入れ路線が1線のみの駅としては埼玉県内で最多の乗車人員を記録している。
そのため、遅延時などにはデッキ上に多くの人が滞留し、安全性や利便性の面で課題が生じていた。川口市は以前から中距離電車の停車とホームの増設をJR東日本に要望していた。
その要望が実を結び、2025年4月、川口市とJR東日本大宮支社は、「上野東京ラインの川口駅停車」に向けた基本協定を締結した。協定の正式名称は「川口駅上野東京ラインホーム及び自由通路等の整備に関する基本協定」である。
これにより、今後は川口市とJR東日本が連携し、川口駅に新たなホームや自由通路などを整備する計画が進められる。川口市は、2025年度から測量・地質調査を実施し、基本設計・概略設計に着手する予定と発表している。
こうして動き出した川口駅への上野東京ライン停車構想だが、利便性向上への期待がある一方で、ネット上では一部に批判の声も上がっている。その背景には何があるのだろうか。
川口駅に新たに上野東京ラインが停車する計画に対し、批判の声が上がっている。特に目立つのが
「停車駅が増えることで所要時間が延びる」
との指摘だ。こうした懸念は、川口以北の駅を利用する通勤者から多く、通勤時間の増加による負担を危惧する声が強い。
通勤時間の延長は、時間的・経済的な損失を招く。鉄道総合研究所(東京都国分寺市)の試算によれば、平日午前7時半に輸送障害が発生し、1万人の乗客が平均30分の遅延を被った場合、以下のような経済損失が生じる。
朝の時間帯(午前10時まで)における旅客の時間価値は32.8円/分とされており、個人あたりの損失は
・32.8円 × 30分 = 984円
となる。これが1万人規模になると、
・984円 × 1万人 = 984万円
と、1回の遅延で約1000万円の経済損失が発生する計算だ。これが日常的な通勤で繰り返されれば、影響はさらに大きくなる。こうした背景を踏まえれば、川口駅への新規停車に対して慎重な声が上がるのも当然といえる。
では、川口市内からはどのような声が上がっているのか。
431億円負担に揺れる市財政
川口市民の間では、市の費用負担に対する懸念が多く上がっている。協定によれば、新たに整備されるのは以下の施設だ。
・停車ホームや駅舎
・駅東西を結ぶ自由通路
・駅舎内の店舗
総事業費は約431億円を基本額として想定されており、今後詳細が詰められる見込みだ。
このうち川口市が主に負担するのは、停車ホームや駅舎、自由通路の建築費。測量などの準備は2025年度から始まる予定だが、完成までは10~12年かかる見通しで、開業は2030年代後半を目指している。
建設資材の価格高騰もあり、今後さらに費用が増える可能性が懸念されている。また、完成時には現在の40代後半以上が退職している可能性が高く、通勤需要が減少しているおそれもある。そのため、
「そこまでの投資に見合う価値があるのか」
と疑問視する声もある。さらに
「すでに隣の赤羽駅に停車している以上、新たに川口に停める必要はない」
といった意見もあり、川口市民の間でも賛否が分かれている状況だ。
上野東京ラインの「川口駅停車」をめぐり、さまざまな批判が噴出している。川口市のウェブサイトによれば、同施策の目的は、駅の混雑緩和や通勤・通学の利便性向上、来訪者の利便性向上を通じて、広域的な関係人口の拡大を図る点にある。
これらを実現するには、中距離電車の停車による輸送力の強化が不可欠だ。2023年に策定された「川口駅周辺まちづくりビジョン」でも、同プロジェクトは優先的に取り組むべき施策と位置づけられていた。
今回の基本協定の締結により、川口市としては長年の悲願が実現する格好となった。一方で、列車の通過駅となる利用者の機会損失や、川口市が負担する多額の費用についても、冷静な検証が求められる。
※以下引用先で
https://merkmal-biz.jp/post/97521
Merkmal(メルクマール)2025.07.20
引用元: ・【JR東日本】ネットで話題 川口駅に「上野東京ライン」は本当に必要か? [七波羅探題★]
美術館と双璧なんだから
陸の孤島にしてしまえ

