いくつかの証言によると、参加者は最大で4000人。映像を見る限り、その大半は30歳以下のようだ。
彼らは「スーパーノヴァ」音楽フェスティバルに参加するため、イスラエル南部の人里離れた場所に集まっていた。このフェスティバルでは、秘密の場所でダンスや音楽、アートを楽しめ、飲み物もふるまわれる。
実際、現地時間7日午前7時22分にアップロードされた動画には、やさしい朝日を浴びながら笑ったり、踊ったりする参加者の幸せそうな笑顔がたくさん映っていた。
しかし参加者の頭上には、小さな黒煙が上がっていた。恐怖が迫っていることの兆候だった。
ガザから発射されたロケット弾を迎撃するためにイスラエル軍が使用した、防衛ミサイルの噴煙とみられる。
その数時間後、イスラム武装組織ハマスはイスラエルに数千発のロケット弾を撃ち込んだ。
フェスティバルの参加者の何人かが、頭上の小さな黒い煙を見上げているのが、動画では確認できる。気づかずに踊り続けている人もいる。
直後に投稿された別の動画には、音楽が停止され、フェスティバル会場から人々が避難を始める様子が映っている。
パニックに陥ったり、身をかがめたりする人もいれば、平然と出口に向かう人の姿もある。
ロケット弾の攻撃が始まってから何分くらいで、武装集団が到着したのかは不明だが、あっという間にすべてのことが起きたということを、目撃者の証言が示唆している。
「ロケット弾が発射されて、それから発砲が始まった。いろんな方向から飛んできて、どんどん音が大きくなっていった」と、フェスティバル会場でマッサージセラピストとして働いていたギラド・カープラスさん（31）はBBCに語った。
「みんなが倒れていくのが見えた。その様子を見ながら、私たちはジープに飛び乗って野原の方へ向かった」
ある女性が投稿したインスタグラムのストーリーには、ロケット弾が上空を飛び、人々が会場を離れる様子が映っていた。
「私たちが主要道路を通った1分後に、テロリストが銃撃していると誰かが叫び始めた」と、この女性はフォロワーに宛てて書いた。
「その2分後に別の方向へ向かうと、そこにもテロリストがいることに気がついた」
武装集団がこの場所でフェスティバルが開催されていることを知っていたかどうかはわからない。しかし、静かな田園地帯に響き渡る音楽が聞こえたことは間違いないだろう。
私たちは、この集団がフェスティバル会場を偶然見つけたにせよ、そうでなかったにせよ、人を殺す準備をしてやって来たことも確認している。
野原や砂漠に逃げ込んだ人がいた一方で、武装集団はフェスティバル会場を念入りに調べ、参加者を見つけると殺害していった。
駐車中の車のドライブレコーダーには、虐殺に関わった武装集団のうちの3人が映っていた。
映像の冒頭には、車の横に丸まって横たわっている人が映っている。体は動いていない。
自動小銃で武装した人物が、血まみれの男性に地面に伏せるよう指示し、男性が着ているTシャツの背中の部分をつかんで、ドライブレコーダーに映っていない場所へ連れ去った。男性が生き延びたかどうかは不明だ。
すると、車のそばに横たわっていた人が動き出した。この男性は死んだふりをしていたとみられる。男性は頭を上げて、武装集団がいなくなったかどうかを確認した。
これは、致命的なミスだった。
数秒後、ドライブレコーダーの撮影範囲内に武装集団の別のメンバーが現れた。この人物は男性の頭を至近距離から撃ち、立ち去った。
このドライブレコーダー映像には、男性の集団も登場する。この集団の中で武装しているのは1人だけで、略奪が目的のようだ。車のそばで死亡している男性のポケットをあさったり、止まっていた別の車に積まれていたスーツケースの中を調べたりしている。集団はさらに、車の中に隠れていた男女2人を見つけて連行した。
この2分後、連れ去られた女性が再び画面に映った。女性は飛び跳ねたり、腕を振りあげたりしている。この頃、イスラエル国防軍が侵入者を撃退するための活動を開始していた。ただ、この数秒後には女性の周囲を銃弾が飛び交い、女性は地面に倒れ込んだ。私たちは、女性が生き延びたかどうかは確認していない。
音楽フェスティバルの会場は戦場と化した。そして、いまも悪夢が続いている人たちもいる。
ハマスは、会場にいた数人を人質に取ったと主張している。イスラエル側は、同国各地から約100人がガザ地区に連行され、拘束されているとしている。(抜粋)
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-67061811.amp
