この感染症は米国の乳幼児が入院する主因であり,2022年から2023年にかけては特にひどかった。
米国では毎年5万8000人の子供と17万7000人の高齢者がRSウイルス感染症で入院し,うち300人の子供と1万4000人もの高齢者が亡くなっている。
数十年に及ぶ研究の末,RSウイルスに対するワクチンがついに登場した。
ワクチンの研究開発はこのウイルスが1956年に発見されて間もなく始まったが,1960年代の一部の臨床試験が悲惨な結果に終わり,その後の数十の試みも失敗して,長年にわたって進歩が阻まれてきた。
それがいま,米食品医薬品局(FDA)と米疾病対策センター(CDC)の承認を得た高齢者向けRSウイルスワクチンが1つではなく2種類ある。
また,この記事の執筆時点で,妊婦に接種して出生後の乳児を守るワクチンが承認待ちだ(編集部注:8月下旬に認可された)。
これらの開発につながったブレークスルーは,ウイルスのタンパク質の形状を調べて50年来の謎を解いたことによる。この発見は,タンパク質の構造に基づいてワクチンを設計する新時代の到来を告げた。新型コロナワクチンの素早い開発を可能にしたのと同じ方法だ。
これまでRSウイルス感染を防ぐ主な方法はマスク着用や手洗い,患者との接触を避けるなど,一般的な風邪の予防と同様の衛生習慣だけだった。
また,発症や重症化を抑える薬が1つあった。「パリビズマブ」という短時間作用型のモノクローナル抗体で,乳幼児に受動免疫(本人の体外で作られた抗体による防御)を一度に最大1カ月間だけ付与できる。
だが,1998年に承認されたこの薬は複数回の投与が必要で,1回の費用が1800ドルを超える。
引用元: ・【ついに登場RSウイルスワクチン】 米国では毎年5万8000人の子供と17万7000人の高齢者が入院し、300人の子供と1万4000人もの高齢者が死亡