だが、専門家らはいまだに、感染後に残る一連の症状について、その原因を明確にすることはできずにいる。
そうしたなか、米ペンシルベニア大学医学大学院(PennMed)の研究チームが科学誌『cell』(セル)に、新たな研究結果を発表した。それによると、後遺症のひとつとして知られる「ブレインフォグ(脳の霧)」やその他の認知機能の低下は、(幸せホルモンと呼ばれる)セロトニンの減少が関連している可能性があるという。
後遺症は、「COVID-19を引き起こす新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染後、長期にわたって体内で炎症が続き、それによって神経症状が残るもの」と説明されている。
この研究結果は、そのメカニズムを解明するための、ヒントとなるものかもしれない。
研究チームが発表したニュースリリースによると、チームは複数の臨床研究のために収集された血液と便のサンプルと疾患モデルの小動物を使用し、それらと後遺症の関連性について評価を行った。その結果、感染から数カ月が経過しても後遺症がある患者の便のサンプルに、SARS-CoV-2の痕跡を確認したという。
これは、感染から長期間が経過した後も、一部の患者の腸内にはウイルスの構成要素が残っているということを示唆している。
「新型コロナ後遺症」は、感染から3カ月以上がたっても続く一連の症状の“総称”。
ミシガン州立大学医学部神経筋医学科のアミット・サチデヴ助教によると、それらの症状には、倦怠感やめまい、頭痛、感覚喪失など、多くの神経症状が含まれる。
サチデヴ助教は、「後遺症に悩む人たちの多くは、残念ながら体の機能が感染前の状態に戻ることはないだろう」としている。
また、これらの症状について、ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターの上級研究員、アメシュ・アダリヤ医師は、「一部はセロトニンの欠乏によって説明が可能だろう」と述べている。
サチデヴ助教によれば、ブレインフォグ、精神疲労、動作が遅くなるなど、後遺症の多くは中核症状、またはまたは脳症状であり、うつ病などの症状と類似しているという。
セロトニンが減少する理由が解明されたわけではないものの、一部の患者にとっては、セロトニンを増やすことが有効な場合もあるとの見方を示している。
ただ、現在のところ、セロトニンの働きを増強する抗うつ薬(SSRI)の使用が後遺症の治療に使用できるのかどうかについては、明らかになっていない。
アダリヤ医師は、「その答えを出せるのは、臨床試験だろう」と指摘。
また、サチデヴ助教も、後遺症の原因がはっきりしていない現時点では、SSRIの使用は「避けておくのが賢明だろう」と述べている。
アダリヤ医師は、セロトニンや迷走神経に関して示された仮説は初期の研究に基づくものであり、関連性についてより明らかにするためには、「さらなる研究が必要になる」としている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/791d491fad9ce4c179bf64990de6a90e207f9323
引用元: ・【ミシガン州立大学助教】「新型コロナウイルス後遺症に悩む人たちの多くは、残念ながら体の機能が感染前の状態に戻ることはないだろう」