https://www.sankei.com/article/20231117-BHFTXRITHRIMTCORIYCRTCAYCQ/
2023/11/17 17:42
「男性は上半身が裸でも問題視されない」「トイレの小便器の間には衝立しかなくても当たり前」。そんな社会の状況に「男性の体はあまりにも雑に扱われているのではないか」と、疑問を投げかける人がいる。11月19日の「国際男性デー」を前に行われたイベントで講師を務めた大妻女子大准教授の田中俊之さんが、「男性学」の立場から、男性の性を取り巻く問題点を語った。
「男性学」の立場から
男性学は、男性が男性だからこそ抱える問題を対象とする学問だ。
「例えば、男性の自殺率が女性よりもおおむね毎年2倍近く高いといった問題に着目し、男性特有の悩みや葛藤について研究をしている」(田中さん)という。
15日に開かれた男性の尿漏れケアに関する啓発イベントで、田中さんは、男性自身が尿漏れケアになかなか踏み切れない現状があることを踏まえ、その背景を、男性学の立場から3つの視点で分析した。
男性の胸の露出は問題ない?
1つ目に挙げた視点が、社会における男性の体の扱われ方。「自他ともに雑な扱いをしている」と鋭く論じた。
近年、子供の性教育の場を中心に、「プライベートゾーン」という概念が普及している。男女とも水着で隠れる体の部位は、安易に他人に見られたり、触られたりしてはいけない場所。自分も、他人のプライベートゾーンを見たり、触ったりしてはいけない部分と教えられる。
だが、田中さんは「『水着で隠れる部分』という説明では、男性の上半身の扱いが抜け落ちてしまう」と警鐘を鳴らす。「女性であれば、胸が見える、触られるのは大問題になるが、男性ならスルーされる側面がある」
あるいはトイレ。女性は必ず個室に入る。しかし男性の「小」の場合は個室ではなく、一列に並んだ小便器と小便器の境界には、あっても衝立程度だ。
「横をのぞけば、性器が見える状況で用を足す。女性が同じ状況なら非常に不愉快な思いをすると思われるが、男性だと当たり前とされてしまう。気にしている男性も少ないと思うが、自分も他人も、男性の体に対して、あまり丁寧に扱っていない」
そのことが男性の尿漏れ対策につながりにくい背景にあるのではないかと説明した。
冗談の対象にされる
田中さんが2つ目に説明したのが、性器を巡る言動の男女差だ。
女性の性器の名はそもそも口にすることがはばかられるほどタブー感が強く、そのことが女性特有の健康問題の解決を阻んでいる側面がある。一方で男性の場合は、冗談の対象のようにされている点に問題があるという。
例に挙げたのが、子供も視聴するようなバラエティー番組。男性タレントの入浴シーンで、腰に巻いたタオルがとれた瞬間、「チン」という効果音とともに爆笑が起こる。
「もし男女が逆なら大問題だ」と田中さん。「男性の下着の中のことは、軽く冗談として扱われることがあるから、尿漏れの悩みを周囲に相談しにくくなっているのではないか」と指摘する。
日傘と同じように
最後はジェンダーの視点から、そもそも「尿漏れ」は女性だけの問題という無意識の思い込みがあるのではないか、と説いた。
男性にも尿漏れがあり、それをケアする品は存在しているが、なかなかケア用品に手を出せない男性の心理について、「日傘」を例に説明した。
「日差しが強くて遮りたいのは性差なく感じること。しかし、日傘を差す男性はこれまで、珍しい存在だった。私自身、あまりの酷暑に、2年前から日傘を使うようになったが、買った当初は使う勇気がなく、しばらくかばんに入れたままだった」
だが、使ってみれば日傘は快適なグッズだった。使っているのを見て、他人からとやかく言われることもなかったという。
「ジェンダーの問題は、自縄自縛の側面がある。尿漏れケアには、女性向けというイメージがあるかもしれないけれども、下着がぬれることで、男性も不愉快な思いをしているはず。対策をしたら快適に日常生活を送れる、そういうアイテム。男性が自分の体をケアすることは大切で、まずは使って、快適さを体験してみるのがいいのではないか」と語りかけた。
引用元: ・男性トイレ「小」は衝立があれば十分なのか 「横をのぞけば、性器が見える状況…」「雑に扱われる」オトコの性 [少考さん★]