試合前の整列に向けて駆け出す4校(枚岡樟風、PL学園、泉尾工、鶴見商)の連合チームナイン=東大阪市の枚岡樟風高グラウンドで2022年9月11日午後2時27分、中田博維撮影
中京(岐阜)が11回目の頂点に立った8月末の第67回全国高校軟式野球選手権大会。明石トーカロ球場(兵庫県明石市)での優勝後の記者会見が終わろうとする頃、平中亮太監督(41)が取り囲む報道陣に、こう切り出した。「軟式野球を取り上げていただきありがたかった。(軟式を)もっと多くの人に知ってほしい」。切実な訴えから、高校軟式野球を巡る強い危機感が伝わってきた。「軟式」の現状とは。
中京の優勝から約2週間後の9月11日。大阪府内で始まった秋季近畿地区大会府予選に、PL学園が4校でつくる連合チームで試合に臨んだ。甲子園で一時代を築いた硬式だけでなく軟式も全国大会に11回出場し、2001年には府勢で唯一、全国制覇を経験した強豪だが、部員数減を受けて今回初めて連合チームで参加した。
同校監督で連合チームの部長を務める斉藤大仁(だいじ)さん(61)は「隔年で人数が少ない学年があり、最近は(9人そろえるのが)ギリギリだった」。過去に2回、秋季予選を辞退したが、9人に数人足りない程度だった。しかし、今年は夏が終わり3年生7人が引退。さらに勉強にシフトしたいと2人が退部した結果、2年生1人、1年生3人(うち女子部員1人)の計4人に。「歴史を閉じるぐらいの覚悟をしたが、試合をしたいという希望を部員から聞かされた」と斉藤さんは説明する。
PL学園だけではない。少子化に加えて中学で軟式野球をする生徒が少なくなり、高校球児そのものが減っている。硬式以上に軟式の部員数は減少傾向だ。日本高校野球連盟によると、統計を取り始めた1983年(硬式は82年)以降、部員数はピークだった90年の1万9915人から減り始め、今年5月末には7820人(硬式13万1259人)に。加盟校数は84年の702校が399校(同3857校)になった。
だが、暗い話題ばかりでもない。日本高野連が発表している「継続率」だ。3年生の5月末時点の部員数を2年前の1年生の部員数で割ったもので、今年の軟式は途中入部者が増加したこともあって105・6%と統計開始以降で最も高かった。2年前に入学・入部した生徒が2369人(新型コロナウイルス感染拡大の影響で20年は7月末集計)だったのが、3年生になった今年は2502人に増えたのだ。硬式からの転部も考えられるが、硬式の継続率も92・7%と今年が最も高かった。しかし、軟式とは10ポイント以上の差がある。
途中からでも始めたくなる軟式の魅力は何だろうか。大阪府立東百舌鳥(ひがしもず)(堺市)は、3年生9人のうち7人が途中入部だった。けがで1年の8月に遅れて入部した元主将の藤田力也さん以外の6人は2年途中からの加入。中学時代は野球を経験したが高校では「野球はもういいかな」とハンドボール部に入ったり、部活をしない「帰宅部」だったりしたという。
ではなぜ途中入部したのかを聞くと、森本凜太朗さんは「迷ったが野球が好きだったので」。同校に硬式野球部はないが、金子祐与さんは「(硬式なら途中入部は)無理だったと思う。途中から追い付けるかどうか」と話してくれた。さらに、藤田さんは「硬球は慣れるまで時間がかかり、けがのリスクもある」、小島颯斗さんは「硬式は推薦で上手な人が集まる学校があるが、軟式は同じレベル」と説明した。
同校の場合、厳しい上下関係や丸刈りルールなどとは無縁の和やかさも魅力的だったようだ。とはいえ練習の厳しさを振り返る声もあり、今夏の選手権府予選では、私学の大阪桐蔭や阪南大高を倒しての8強入りと結果を出した。
軟らかいボールゆえに飛距離は出にくく、一般的に本塁打を何本も放り込むような強打者はいない。だが、投げる・打つ・捕るの基本さえできればチームの力で勝つ喜びも味わえる。中京の平中監督は、打球を高く弾ませる間に走者を進める軟式特有の作戦「たたき」などを例に挙げつつ「とても面白い競技だと思う。どんな形であれ、軟式に触れてくれる子供たちが増えるのはありがたい」と語る。【中田博維】
https://news.yahoo.co.jp/articles/2e65f43f95d9475737c55d75dca9670806a4b4c7
引用元: ・部員総数は減っても「継続率」100%超、高校軟式野球の魅力は [愛の戦士★]
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