・そこにはインド本国におけるヒンドゥー・ナショナリズムの影響がある。
・スナク氏はムスリムを念頭に「イギリスを中傷する者を過激派とみなすべき」と繰り返し、これはイギリスの保守派の支持を集める一因となった。
史上初のアジア系としてリシ・スナク氏がイギリス首相に就任したことは歴史的な出来事ではあるが、イギリスで民族対立がエスカレートするリスクを抱えている。とりわけ注意すべきは、アジア系首相やその支持者に対するものではなく、アジア系同士によるヘイトとテロだ。
■インド系首相の光と影
スナクがアジア系として初めてイギリス首相に就任したことは「多文化共生の表れ」と評価することもできる。
ただし、全く逆のことをいうと、スナク首相誕生によってイギリスで民族対立が激化するリスクも大きい。
スナク首相誕生がイギリスのインド系市民の高揚感をこれまでになく高め、これがもともとインド系と対立しがちだったイスラーム系、とりわけパキスタン系との緊張をいやが上にも高めるからだ。
(中略)
■スナク首相とヒンドゥー
保守党の党首選においてスナク氏は富裕層も多いイギリス国内のインド系はもちろん、インド本国からも物心両面で支持を集めた。
こうした背景を考えると、スナク首相誕生でインド系市民の間で高揚感がこれまでになく高まることは避けられず、それはパキスタン系との衝突をエスカレートさせやすくするとみられる。
もちろんスナクはパキスタン系と衝突するインド系を支持したり、賞賛したりしているわけではないし、明白なヒンドゥー・ナショナリストともいえない。
しかし、スナクもヒンドゥー教徒であることをしばしば強調してきた。
(中略)
■反ムスリムでの一致
こうしたスナク首相の誕生はインド系の自信を深め、それは結果的にこれまで以上にパキスタン系との衝突がエスカレートすることが懸念されるわけだが、それはイギリスにおける白人右翼と共鳴しやすい。
スナクが首相の座を射止められた一因には、イギリス社会にあるイスラーム系への反感をテコにしたことがあった。
日本ではあまり報じられないが、スナクは保守党党首選でこれまでのテロ対策を不十分と批判し、「イギリスを中傷する者を過激派と扱うべき」と主張し、物議を醸した。
イギリスの治安機関はこれまで、学校や地域などでムスリムを監視し、テロ組織に近づかないようにしてきたが、これがかえってムスリムの反感を招き、逆効果であるとして、保守党政権下で見直し作業も進められてきた。
これに反対するスナクの主張は、何をもって「中傷」と呼ぶか曖昧で、治安機関の裁量を極限まで大きくしかねない(政府批判を取り締まる手段として不敬罪を用いるトルコのように)。
そのうえ、そこには暗黙のうちにイスラーム主義者が想定されているとみられたため、野党・労働党やイスラーム系団体、人権団体などだけでなく、保守党内部からも異論があがった。
しかし、結果的にはこれが保守派の多くの支持を集め、スナク氏に勢いをもたらした。
ヨーロッパでは2010年代にイスラーム過激派のテロが増え、これが保守派を中心に反移民感情を強めさせてきた。
そのなかで、フランスのマクロン大統領に代表されるように、反テロやイスラームへの警戒を力説し、保守派の支持を取り込もうとする手法も定着してきた。
スナクはこの点でマクロンとほぼ同様だが、異なるのは反イスラームで共通するヒンドゥー・ナショナリズムの社会的認知がこれによってヨーロッパで高まったことだ。
そのため、スナク首相誕生がイギリスでこれまで以上に人種、民族、宗教に基づく分断を促しても不思議ではないのである。(六辻彰二)
11/4(金) 8:30
https://news.yahoo.co.jp/byline/mutsujishoji/20221104-00322447
https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/mutsujishoji/00322447/title-1667459903437.jpeg
引用元: ・【英国】インド系首相誕生は多文化共生の表れか、民族対立のリスクか 反イスラムで白人保守層と一致 [樽悶★]
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