「昭和・平成」のクレーマーとの違いとは?
息苦しいコロナ禍。イライラが募って、ギスギスが強まり、ストレスは増え続け……。そこで大手を振っているのが“イチャモンこそ正義”を地で行くカスタマーハラスメント。理不尽な顧客には果たしてどう対処すべきなのか。令和の新・ビジネス常識を紹介する。【窪田順正 報道対策アドバイザー/ノンフィクション・ライター】
とあるホームセンター。レジにいた店員が近くの男性客から手招きされる。何事かと思って近づくと、男性客は胸ぐらをつかんでこうすごんだ。
「お前、なんだよその態度、客をナメてるのか?」
そのまま15メートルくらい引きずり回された店員はとにかく暴力はやめてほしいと訴えたが、男性客はまったく聞く耳を持たない。因縁をつけられる理由が思い当たらない店員を恐怖のどん底につき落としたのは、男がこんな恫喝を繰り返したことだった。
「俺は人を殺したことがあるんだよ!」
これは全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟(UAゼンセン)が2020年12月に公表した事例をベースに再現した「カスハラ」の一例だ。聞いているだけで不快になる横暴な振る舞いに、「人間のカスによるハラスメントってこと?」と思いたくもなるところだが「カス」とはカスタマー、つまりは「顧客」によるハラスメント(嫌がらせ)だ。そんなカスタマーハラスメントがコロナ禍に入り増えている。
「カスハラ天国」
交通・運輸・観光などの産業で働く約60万人が加盟する全日本交通運輸産業労働組合協議会(交運労協)が、21年5~8月に全国の公共交通機関、物流、観光産業の現場で働く2万908人を対象に行った調査では、直近2年以内に「迷惑行為」が増加していると感じる人が57.1%にも及んでいる。つまり、コロナ禍を経た現代日本ではいたるところで、「お客様は神様だろ」と言わんばかりの上から目線の態度で店員に罵声を浴びせたり、説教したりする人が大量発生して、「カスハラ天国」の様相を呈しているのだ。
という話を聞いても素直に受け取れない人も多いだろう。「スメハラ」(体臭や口臭などで周囲を不快にさせる行為)や「ヌーハラ」(麺をすする音で周囲を不快にさせる行為)なんて言葉もあるように、最近は猫も杓子も「ハラスメント」さえつければ社会問題になってしまう風潮がある。昔からあった、店や企業に対して理不尽な要求をする「モンスタークレーマー」を今風に言い換えて騒ぎをあおっているだけではないのか――なんて懐疑的に見ている方もいるかもしれない。
かつては「金目的」だった
ただ、従来のモンスタークレーマーと、現在、増加中のカスハラは似て非なるものだ。その違いは一言で言えば、「目的」だ。それを理解するのにうってつけの「事件」がある。
今から18年前、有名牛丼チェーンの店長が常連客から毎日のようにクレームを受けていた。この客はいつも「持ち帰り牛丼」を購入していたが、そのたびに牛丼の汁が漏れてしまうと文句を言って、連日、苦情電話をかけてくることもあった。
「ほらみろ、昔もカスハラなるものはあったじゃないか」と思うだろうが、実はこの客がクレームを入れたのは嫌がらせではなく、「金目的」だった。店長につきまとっては「返金」名目で牛丼代相当の金を払わせていたのだ。苦情対応だけではなく、金銭まで要求されていた店長は次第に心を病み、最終的にはこの客を刃物で刺し殺してしまう。これは典型的な「モンスタークレーマー」が引き金となった最悪の事件として今も語られている。
一般的に「クレーム」というのは、消費者が事業者に対して商品やサービスの不備を指摘し、商品の返品や交換、さらには追加サービスの提供を求める「条件闘争」の側面が強い。それが行きすぎてモンスター化すると、「精神的苦痛に対する賠償金を払え」などと高額な金品を要求したりするのだ。
金品の要求ではなく
一方、令和のカスハラにはそのように何か物資的な恩恵を得ようという目的はない。客という優位な立場を使って、店員や従業員を侮辱する「ハラスメント」自体が主目的だ。それはさまざまな調査でも明らかになっている。
引用元: ・【新潮】「カスハラ」の7割以上が男性だった!50代以上で顕著に 昭和・平成の“金銭要求系”のクレーマーとの一番の違いは? [愛の戦士★]
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ヒント:お客様は神様