【異種移植医療】中国 遺伝子組換えブタ肝臓を末期がん患者へ移植「非常に順調」移植肝は順調に胆汁を生成 倫理委員会は慈悲深く承認

この移植は患者の寿命を延ばすことを目的としており、医師たちに重要な教訓を与えている。

遺伝子組み換え豚の肝臓を71歳の男性に移植する手術は8時間続いた。写真提供：デビッド・タデヴォシアン/Shutterstock
中国の71歳の男性が、遺伝子組み換え豚の肝臓移植を受けた初の生存者となった。また、豚の臓器を移植されたとされる5人目の人物でもある。手術から2週間以上が経過したが、男性の「状態は非常に良好」だと、移植手術を指揮した中国安徽医科大学付属第一病院の外科医、孫北成氏は語る。
外科医らは手術の詳細をあまり公表していないが、研究者らは手術の成功に勇気づけられている。「非常に興奮するニュースだ」とインディアナポリスのインディアナ大学医学部の移植外科医、バーシン・エクサー氏は言う。
肝臓は、人間に移植された一連の豚の臓器の中で最新のものだ。2022年初頭から、外科医らは豚の心臓、腎臓、胸腺を4人に移植した。移植後数カ月で3人が死亡したが、研究者らは、移植候補者として選ばれた要因となった彼らの元々の健康状態の悪さが、移植が要因であったかどうかを判断することを困難にしていると述べている。4月中旬に手術を受けた1人は、現在も生存している。
この移植により、研究者は異種移植（ある種から別の種への臓器の移植）の実現可能性について貴重な知見を得ることができた。臨床医らは、この処置によって、臓器提供を待つ間に毎年亡くなる何千人もの人々にいつの日か臓器が提供されることを期待している。
今年、異種肝臓移植が急増している。1月には米国のチームが、臨床的に死亡した人の体外で遺伝子組み換えブタの肝臓を移植した。3月には、中国西安市にある空軍医科大学西京病院の移植外科医ケフェン・ドウ氏とその同僚が、家族の承諾を得て、ゲノム編集されたブタの肝臓を臨床的に死亡した人に移植した。肝臓は10日間体内に留まり、拒絶反応の兆候は見られなかった。また5月初旬には、中国の別のチームがブタの腎臓と肝臓を臨床的に死亡した人に移植した。