2025.01.17 14:20
Merkmal
https://merkmal-biz.jp/post/82940車社会の米国において、車は“正義”といえるのだろうか――。米国人の暮らしは、その喜びも悲しみも、いつも車とともにあるのかもしれない。
1930年代から繁栄を極めたニューヨーク、特にマンハッタンの摩天楼が象徴する大都市化。その一方で、米国社会は人類史上もっとも充実した車社会を築いてきたことは間違いない。
米国映画のなかで、車はしばしば米国文化の象徴として描かれる。ドライブを通じて物語が展開する「ロードムービー」の名作も数多く生まれている。多くの米国人にとって、車は単なる生活必需品を超えた存在だ。もはや
「セカンドネイチャー(第二の自然)」
ともいえる、空気のようなものなのだろう。彼らは車を運転しながら音楽を楽しみ、会話に花を咲かせ、ときには考え事をする。嬉しいときも悲しいときも、車のハンドルを握りながら日々を過ごしている。
しかし、車が空気のような存在であるということは、その重要性や影響が生活のなかで見えにくくなることを意味する。車がなければ通勤や買い物が困難になることは理解しているものの、その事実さえ忘れられているのかもしれない。
車に依存した暮らしは、人々の生活満足度にどんな影響を与えているのだろうか。
週200マイル以上走行の幸福度の壁
アリゾナ州立大学の研究チームが2024年11月に「Travel Behaviour and Society」で発表した研究では、都市部と郊外に住む米国の成人2155人を対象に調査を行った。
データを分析した結果、外出の50%以上を車で行っている人は、
「全体的な生活満足度(well-being)が低い」
傾向があることがわかった。生活満足度とは、自分の生活にどれだけ満足しているかを示す指標で、物質的、社会的、精神的な要素を含む主観的な評価だ。生活全般に対する自己評価をもとに、感情的な状態が反映される。生活満足度に関わる主な要素は次のとおりだ。
・経済的安定:安定した収入と生活水準。
・健康:身体的および精神的な健康状態。
・人間関係:家族や友人との絆、社会的つながり。
・自己実現:仕事や個人の目標に対する達成感や充実感。
・生活環境:快適な住環境、安全な地域、公共サービスの充実。
また、週に200マイル(約320km)以上車で移動する人も、移動時間が短い人より生活満足度が低い傾向がある。この結果は、回答者の収入、人種、性別などの要因を調整しても変わらなかった。
2017年の「National Household Travel Survey」によると、平均的な米国人は1日の移動の87%を自家用車で行い、1週間あたりの平均移動距離は280マイル(約450km)に達している。つまり、多くの人がこの研究で問題視された
・50%以上
・週200マイル以上
を軽く超えている状況だ。一方で、車の移動割合が50%以下、または週200マイル未満の人は、その範囲内では生活満足度が高まる傾向があることもわかっている。
車依存の社会では、意識的に自転車や徒歩で移動することが逆にストレスや不満を感じる原因になる可能性が高い。車で必要な移動ができる環境は、生活満足度を向上させる要素でもある。ただし、近場の用事まですべて車で済ませてしまうと、健康に悪影響を及ぼし、その結果生活満足度が低下することになる。研究チームは、米国人が健康を犠牲にしてまで頻繁に車を利用するのは、
「他の選択肢がほとんどないから」
と指摘している。そして、
・コンパクトな都市設計や歩きやすい歩道
・自転車レーンなどを整備する「交通のマルチモダリティ(multimodality)」の推進
が必要だと述べている。問題は、車に過度に依存していることにある。車を利用しながらも、他の移動手段とのバランスを見つけることが求められているのだ。
インドで政府主導の公衆衛生活動に携わり、シリアでは市民社会のプロジェクトを支援してきたグラント・エニス氏の著書『Dark PR: How Corporate Disinformation Undermines Our Health and the Environment(暗黒のPR:企業の偽情報はいかに私たちの健康と環境を損なうか)』では、
・化石燃料産業
・道路産業
・自動車産業
が、私たちの周りに存在する重要で危険な問題から目をそらすために同じ物語を使っていることが説明されている。彼らは
※以下出典先で
引用元: ・外出の50%以上に車を使うと生活満足度が低下 米国調査で明らかになった「車依存社会」の影響とは [七波羅探題★]
電車や自転車、徒歩なら満足度上がるの?
日本なら自転車移動したら知り合いに出会って話をしたりいろいろできる