同じ年齢でも老化の速度には個人差がある。その要因は何なのか。
「老化が進む速度やタイミングの仕組みを理解することで、老化を予防、診断、治療する新しい技術の開発につなげるのが私たちの研究目標です」
こう話すのは、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室特任講師の早野元詞さん(40)だ。世界的なベストセラー『LIFESPAN 老いなき世界』(日本語訳は東洋経済新報社発行)の著者、米ハーバード大学医学大学院のデビッド・A・シンクレア教授の研究室に2013~17年に在籍し、老化モデルマウス「ICE(アイス)マウス」を開発。シンクレア教授らとの共同研究で早野さんが1月に発表した最新論文では、このマウスを使って、後天的なストレスが老化の速度やタイミングを決定するメカニズムを明らかにしている。
「老化とはこれまで、遺伝子やタンパク質の機能に直接影響する先天的なDNA配列や遺伝子変異の蓄積だと考えられてきましたが、近年の研究では、健康寿命や老化には生活習慣やストレスなど後天的な影響のほうが大きいことが報告されています」(早野さん)
別々の環境で育った一卵性双生児は高齢になると、双子とは思えないほど顔つきが異なってくる。100歳以上の人たちから長寿の秘訣を探る「百寿者研究」では、遺伝的に連なる子孫が必ずしも長寿とは限らないことも分かっている。つまり、先天的なDNA配列よりも食生活やストレスなど後天的な影響のほうが老化に大きく影響しているというのだ。
そのポイントとして注目されているのが、遺伝子の使い方を調整している「エピゲノム」だ。エピゲノムはどの遺伝子を使い、どの遺伝子を使わないかを決めるスイッチのような情報集積回路で、この働きは後天的な影響を受けて変化する。早野さんは言う。
「DNA配列や遺伝子は、情報をゼロもしくはイチで表現するデジタル情報として細胞が増える際に複製が繰り返されています。このデジタル情報の異常が蓄積すると、がんや動脈硬化などを発症します。一方で、環境に応じた微細で連続的な情報を記録する半面、簡単に複製できないアナログ情報を担うのがエピゲノムです。生活環境やストレスといったアナログ情報を加味して遺伝子の使い方を微調整しています」
■若い頃の日焼けや暴飲暴食、体が記憶し老化引き起こす
早野さんらは今回、生後4~6カ月のマウスのDNAを短期的に損傷し、長期の経過観察を行ったところ、DNA損傷は修復され、DNA配列に異常は観察されなかった。その一方、認知機能や筋力、骨密度、視神経などの身体機能が低下していることが分かった。
「若い時期のDNA損傷はDNA配列ではなくエピゲノム変化として記憶され、細胞や臓器のエピゲノム情報を消失させることで老化の速度やタイミングを制御し、長期的な身体機能を低下させることが示されました」
早野さんはこう続ける。
「人間も若い頃に日焼けしたり、暴飲暴食したりするようなストレスを体は覚えていて、それが中年期や更年期にさまざまな疾患や老化現象を引き起こします。これはエピゲノムの変化によって遺伝子が適切に働かなくなり、臓器や筋肉、骨、目や耳などの老化が加速するためと考えられます」
※続きは以下ソースをご確認下さい
2023/02/25 11:30
AERA
引用元: ・老化は生活習慣やストレスなど後天的な影響大 若い頃の日焼けや暴飲暴食を体が記憶 [尺アジ★]