初代の第1話で主人公のアムロ・レイと搭乗したRX-78-2ガンダム、この組み合わせが地球連邦軍の快進撃の一因として寄与することになるが、『ジークアクス』ではシャア・アズナブルがガンダムを奪取。これによって連邦肝入りのモビルスーツ開発計画は大きく狂わされることなり、いわゆる一年戦争のパワーバランスは初代版と異なるものに。
『ジークアクス』の世界線ではジオン公国が地球連邦に勝利したという前提で話が進んでいく。この展開はオールドファンにとっても刺激的なものだったのではないだろうか。
ジオンは連邦に比べ、その国力は1/30以下であるとギレン・ザビも演説で述べていた。地球から遠く離れたサイド3というコロニーを本拠地とするジオンは、本来であれば連邦との戦力差など比べるべくもない。まともにぶつかっては本来の史実通り、ジオンはジリ貧となり、最終防衛線のア・バオア・クーにまで連邦の大艦隊の到達を許すことになる。
『ジークアクス』はそうならなかった場合の、宇宙世紀の物語となっている。(※以下は第11話以前に制作、公開されたものであるため、最新の内容には言及していません)
ジオンはついに連邦に勝った!全く未知の物語を羨ましく感じる歴史オタがここに1人…
さっそく個人的な感想となり恐縮だが、筆者はどちらかと言えば、連邦よりもジオンが好きである。これは別に連邦アンチというわけではなく、基本的に物語の中で敗北する側に愛着が沸いてしまうためだ。
なので連邦が分裂してエゥーゴとティターンズが誕生した際には、敵方となるティターンズを応援してしまった。ライダーや戦隊ヒーローより怪人が、ウルトラマンより怪獣が、源氏より平氏が、徳川より豊臣が好きなのである。
とりわけ日本の戦国時代の敗者の物語は悲惨だ。負ければ一族郎党が成敗されたり、島流しの憂き目を見ることもある。血で血を洗うかつての日本の勢力争いは、ドラマや小説、映画でも頻繁に取り上げられてきた。
ただ、大前提としてそれらの作品群はゆるぎないお約束に縛られている。そのお約束こそ、「歴史準拠」だ。ごく一部のお祭り作品を除き、基本的には勝者と敗者の立場を勝手に入れ替えたりはしない。そのため、NHKの大河ドラマなどでいくら魅力的な登場人物が歴史上敗北する側の勢力の一員として登場し、いくら視聴者人気を獲得しても、本来の歴史をひっくり返して負け戦を勝ち戦にすることはない。これはもう当たり前のことなのだ。
先ほど紹介したように、筆者は徳川より豊臣が好きなので、1600年(慶長5年)勃発の「関ヶ原の戦い」では、東軍の徳川家康に対して西軍の実質的大将を務めた石田三成にかなり感情移入する立場だ。有り体に書くと、この時点で有力大名や諸将を篭絡済みの家康に敵対しては三成も後がないのだが、彼としても豊臣家臣団としての意地もあったのだろう。結果、本戦は1日で決着してしまい、三成は敗走するも捕縛。家康と最後の面会を経て六条河原の露と散ることになる。この展開は、変えてはダメなのだ。
ここでガンダムに話を戻すと、これまでシリーズでは「宇宙世紀」という時系列の中で起きた出来事をピックアップして演出する作品が多い。これらの作品の特徴としては初代『機動戦士ガンダム』で描かれなかった地域の局地的な戦いや、密かに行われていたガンダム開発計画の去就。中立コロニー内での連邦とジオンの小競り合いなどが目立った。
そして、こうした作品はTVシリーズと一部設定が異なる部分もあったが、宇宙世紀の大筋の流れには逆らわなかったという特徴を持つ。大筋を変えちゃダメ、という認識が強まるぐらいには、宇宙世紀の歴史もすっかりおなじみになってしまったためだ。
しかし、『ジークアクス』はここの認識がそもそも違う。それが良いか悪いかはさておき、今までシミュレーションゲームなど、一部の媒体でしか描かれなかったIFの展開を地上波アニメでやっている。
これは大河ドラマで三成が「関ヶ原の戦い」を制してしまうというような展開に等しいもので、オールドファンであればあるほど受けるインパクトは大きかったのではないだろうか。
引用元: ・【ガンダム】それアリなの!?と古参胸熱のジークアクス、今作のジオンは「関ヶ原で豊臣軍が勝ったら…」に近しい空想体験 [ネギうどん★]

