金塚彩乃
日本で働き、税金や社会保険料も納めてきたガーナ人男性が、重い腎臓病によって働けなくなった。治療のため日本に滞在することは認められたものの、生活費を得るために働くことはできず、生活保護の申請も却下された。男性が「いきるけんり」を求めて起こした裁判で、裁判所はどのような判断を下したのか。※本稿は、弁護士の金塚彩乃『日本の法に「自由」はあるか?フランス弁護士による現場からの問い』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。
「週3回透析しなければ死ぬ」
ガーナ人男性が訴えた「いきるけんり」
《わたしは、にほんにきて、がんばって、しごとをしていました。
でも、びょうきになり、はたらくことができなくなりました。
わたしは、にんげんです。ろぼっとではありません。
にほんでは、たくさんのがいこくじんがはたらいています。そのひとたちも、にんげんです。ろぼっとではありません。
にんげんだから、びょうきにもなります、けがもします、はたらけなくなることもあります。
はたらけなくなったら、ろぼっとだったらすてられるでしょう。でも、にんげんもすてられるのでしょうか。
わたしたちはにんげんです。だから、びょうきになったり、けがをしたりして、はたらけなくなったら、せいかつほごをみとめてください。
ガーナには、とうせきができる、びょういんが、ほとんどありません。
わたしは、ふつかにいっかいの、とうせきを、さんかい、れんぞくで、できないとしんでしまいます。
わたしはいきたいです。いきるけんりをみとめてください。
いずれは、じぶんで、はたらいて、せいかつひを、かせぎたいです。でも、それまでのあいだ、せいかつほごをみとめてください。おねがいします。》
COMMENTARY解説
「にんげんです。ろぼっとではありません」とガーナ人男性。
1990年を境に外国人への生活保護は認められなくなった。
千葉市の却下を受け、生存権を訴えたが判断は記事にない。
クワク氏は2015年に留学生として来日し、2018年に腎硬化症と診断されて解雇、在留資格を失ってオーバーステイとなった。2019年に透析を始め、2020年に治療目的の在留許可を得たが、生活費を得る手段がなかった。生活保護法は「国民」を対象とするが、1990年までは外国人にも運用上認められていたという経緯が記事にある。2021年の提訴で裁判所がどう判断したかは、この抜粋には記されていない。
VOICESネットの声
5ch: ・「わたしは、にんげんです。ろぼっとではありません」透析が必要な外国人が生活保護を断られた理由 [582792952]
2019年には病院に救急搬送され、人工透析を開始した。その後も体調は悪化の一途をたどり、複数回の手術を余儀なくされた。2020年9月、治療目的のための在留許可が認められたので日本に滞在することはできるようになったが、経済的理由で十分な通院治療を受けることができなかった。医師からは週3回透析をしなければ死んでしまうと言われていた。
2021年夏、まわりのサポートのおかげでクワクは国民健康保険被保険者証の交付を受け、千葉県国民健康保険特定疾病療養受療証の交付を受けることができた。
「いきるけんり」を求めて
千葉市を相手に裁判を起こした
クワクが生きていくためには、日本で治療を受け、生活の手段を確保するしかない。「いきるけんり」を求め、2021年、千葉市を相手に生活保護を認めるよう裁判を起こした。
裁判での主張の法的構成は多岐にわたるが、その核となる主張は、生活保護の基礎となっている憲法25条1項の保障は外国人にも及ぶというものである。
たしかに、生活保護法には生活保護を受けることができるのは「国民」だと書かれている。しかし、1990年までは政府は外国人にも生活保護を認めていた。
実は、1981年に難民条約に加入するにあたって、それまで日本国民に限られていた国民年金などの国籍条項が撤廃されていた。このとき、生活保護法からも国籍条項の撤廃が検討されたのだったが、当時は法律の文言はともあれ外国人にも生活保護が認められていたため、敢えて法律を改正する必要もないとして法改正が見送られていたのである。ところが、1990年を境にして法の運用が変わり、定住者など一部を除いて、外国人には生活保護が認められなくなった。
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