2026.9.17
佐藤 斗夢 大西 孝弘
じわり増えつつある高収入ブルーカラー層の実像を、新刊『 ブルーカラー年収1000万円時代(日経プレミアシリーズ) 』から紹介するシリーズ。国税庁の調査によると、建設業の平均給与は2024年までの10年間で95万円増加している。さらに日本経済新聞がまとめた26年夏のボーナス調査では、2位から5位を建設会社が占めた(2位から順に、大成建設、鹿島、大林組、高砂熱学工業。1位は精密加工装置のディスコ)。今回は4位にランクインした大林組で働く37歳女性現場監督のケース。木造建築に強いという専門性に加え、現場の職人たちとのコミュニケーションに心を砕き、信頼を高めてきた(登場人物の肩書や所属、年齢などは、原則として2026年7月末を基準とする)。
大林組で施工管理を担う石坂ゆい工事係長(37歳)は、2026年の年収が1000万円を超える見通しだ。
かつては一人前の監督として甘く見られていないかと葛藤したこともあるが、今は技能者(職人)とのコミュニケーションを通じて、現場を動かすことにやりがいを感じる。「次は所長を目指す」と強い決意を示す。
「作業員」ではなく「職人さん」
26年6月末、梅雨空の下の夏日。じわりと汗がにじむ東京都内のビル建設現場で、石坂氏は屈強な職人たちに物おじすることなく、きびきびと声をかけていた。施工管理は現場監督とも呼ばれ、工程や品質、安全を管理しながら工事を前に進める仕事だ。
入社以来こだわってきたことがある。現場で働く人を「作業員」ではなく「職人さん」と呼ぶ。「自分の仕事を『作業』と見られるか、『職人の仕事』と見られるか。その違いは、現場の空気や仕事の質にもつながる」と力を込める。
職長や親方との打ち合わせが多い仕事だが、職人の一人ひとりに、朝は「おはようございます、よろしくお願いします」、帰りには「ありがとうございました、お疲れ様でした」とあいさつを欠かさない。
安全面で不安な動きをしていたり、苦労していたりしそうな職人がいれば、自分の担当工事でなくても声をかける。「困ったらこの人に話しかけていい」と思ってもらうことが、現場を動かす力の土台だと考えているからだ。
原点にあるのは、職人への憧れだ。大学と大学院で伝統木造建築の構造を学び、大工の仕事に強く引かれた。授業でビルの工事現場を見学し、巨大な建物も最後は人が一つ一つ手で組み上げていることを知った。「これも職人さんの仕事なんだ。格好いいなと思った」(石坂氏)
学んだ知識を生かし、職人に一番近い場所で役に立てる仕事を探して就職活動し、ゼネコンの施工管理にたどり着いた。大林組を選んだ決め手は、職人との向き合い方だった。「『いいからやれ』と一方的に押し切るのではなく、職人さんの話をよく聞き、対話しながら仕事を進める姿勢に引かれた」と振り返る。
万博・大屋根リングを支えた「木造」の知識と経験
14年に入社してから、高層ビルや物流倉庫などの建設現場で施工管理の経験を積んだ。
学生時代に学んだ木造建築の工事を初めて担当したのは、日本初の11階建て高層純木造耐火ビルだった。社内に経験者は少なく、確定的な基準もなかったため、手探りでのスタートだった。
既存の情報だけでは解けない問題が次々に出てくる。それでも「なぜ」「どうやって」をメンバー全員で考え、すり合わせることで解決の糸口が見え、現場が動き、建物が姿を現していく。石坂氏にとっては、モノづくりの楽しさを再確認する経験になった。
その後、本社勤務となり、第一線の現場からはいったん離れた。本社では一つの現場に専属的に所属することはないが、複数の現場に同時に関わることができる。石坂氏はここで全国の木造案件の技術支援に多く携わった。大阪・関西万博の大屋根リングの建設でも、木造ビルの知識と経験を生かして現場を支えた。本社勤務を通じて、石坂氏は「木造に強い」という自分の専門性を育てられた。
上司に直訴、第一線の現場に戻る
それでも、思いが向かった先は現場だった。「職人さんと日々コミュニケーションを取る現場が、やっぱり一番面白い」。上司に何度も直訴し、26年3月末に今の都内の現場へ赴任した。
(略)
※全文はソースで
https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/090400772/090900002/
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